第57話
第57話です。
始業式後のホームルームを終えて俺は屋上に向かっていた。多くの生徒は部活か帰宅する中、1人反対方向に向かうというのは何だか変な気分。
おそらく俺の方が先輩よりも先に着くだろうからゆっくりするか。
一年生と二年生ではクラスのある階が違う。一年生の方が上の階なので、自然と早くこちらの方が着くのだ。それに、先程から周りを見る限り二年生の生徒を見かけないところから、まだ先輩のクラスはホームルームの途中なのだろう。
もう随分と登り慣れた階段を上ると、重い重い金属製の扉に手をかける。ギイッとサビついて鈍くなる扉はゆっくりと開いた。
そこに見える景色はやっぱり普段と変わらなくて、俺と先輩だけの秘密の場所。他には誰もいない。
「お、後輩くん来たね!」
既にいましたとさ。
後ろを振り返りながらいつもよりも早い先輩に俺は「早くないですか?」と声をかける。
「うん。それがね、先生が、今日くらいは早く帰って遊びたいだろうから今日はもうかいさーんって言って、始業式後すぐに終わったの」
「すぐに?という事はもしかして待ちましたか?」
「んー、まぁ、言っても20分くらいだよ?」
「いや、結構待ってますってそれ」
「そうかな?」
ケロリとしながらそう言われると、自分の時間の感覚がおかしいのではないかと勘違いしてしまいそうになる。だが、20分は結構待っていると思うのだ。同じ学校にいるのに20分も待たされたらさすがにしびれを切らしそうになる。
「まぁ、ずっと音楽聴いてたからね〜。あんまり時間とか考えてなかったんだよ」
「あぁ、そういう事」
確かによくよく見れば先輩の手にはスマホとスマホに繋がれたイヤホンがある。
「まぁ、それならいいです。それよりもそろそろ行きますか?」
「だねぇ。ここにいても仕方がないし」
そう言うと先輩は荷物を背負った。
寒さに少し赤くなる指先でキュッとカバンの肩掛けを持ちながら「行こっか」とこちらを向く。
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