第51話
第51話です。
アイスの入った袋をガサガサと鳴らしながら歩く先輩の後ろを着いていく。
一緒に初詣と新年を迎えるためにそれなりに遅い時間に集合したのだが、その時から先輩の機嫌はやたらと良かった。何か良い事でもあったのかとも思ったが、特にその類の話を聞いた訳でもないので勝手に違うのかなども思ってる。
「先輩」
「どうしたの?」
「先輩って彼氏って存在に憧れたりするんですか?」
「唐突にどうしたの〜?」
カラカラと笑いながら先輩は少し困ったような笑顔を浮かべた。確かに俺の質問自体は突拍子も無くて、本当に聞かれる側からしたら訳が分からなかったと思う。だけど、この疑問自体はずっと前からあったのだ。
「いや、先輩ってモテるじゃないですか?」
「そうなの?」
「前に自分で自分の事可愛いって言ってたじゃないですか……」
「あぁ、そんな事もあったね」
過去を思い出すように空を見つめながら先輩はこくこくと頷く。
本当に思い出しているのかは定かではないが、質問には関係ない。早いところ答えだけ聞いてスッキリしておきたい。
「で、どうなんですか?」
「思ったよりもグイグイ来るんだね。後輩くん?人に何かをお願いする時は?」
「教えてください」
「よろしい」
むふんと満足気に大きく頷くと先輩は「そうだなぁ」と言って腕を組んで少し悩む素振りを見せた。
「中学生の時は彼氏って存在に憧れを持っていたね。それも凄く大きく。まぁ、友達に彼氏が出来たり恋愛漫画の影響が大きかったんだけど」
「幼い理由でしょ?」と笑いながら先輩はまた続きを話し出した。
「だけど、今はちょっと違うかな。高校に入って、友達のもっと大人な恋愛も見たし聞いた。そんな風に過ごすとね、何か違うなって思うの」
「じゃあ彼氏はいらないと?」
「ううん、それも少し違う」
首を横に振ると先輩は人差し指を上に向けてピンと指すと、切れ長の綺麗な瞳を細めて微笑んだ。
「私には多分もう大切な人がいるって事だよ」
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