第44話
第44話
「はぁ」っと白い息を吐きながら私達は明るく照らされている神社の本殿を眺めた。私達の立つ列の横サイドには屋台が沢山並んでいる。
「後で何か食べる?」
「そうしましょうか」
12月31日。それが今日の日付。そして今の時刻は午後11時半だ。
私達と同じ考えを持ったたくさんの人が何人も冬の寒さに耐えながらまだかまだかと腕時計や、スマホの画面を凝視している。
「にしても、後輩くんからお誘いが来るとは思ってなかったよ」
「そうですかね」
「そうだよ。君は私がLINEで暇って送っても寝ますね、で終わらせるじゃんか!だから、後輩くんの方から来るとはとても思えなくてね。初めは送る人を間違えてるのかと思ったよ」
「間違えるなんてことはしませんよ」
「そう?」
「はい。だって先輩が常に最新の連絡先の相手になってるんですよ?いつも暇って送ってくるから。だから、一番上のアイコンをタップしたら自然と先輩に連絡できます」
「あはは〜。それはある意味誘う言い訳にもなったって事でいいかな?」
ニヤニヤと笑いながらそう聞いてみると、後輩くんは特に表情を変えることなく私の方を向いてこう言った。
「いや、先輩と行きたかったから誘っただけです」
「……」
「先輩?」
「……っあ、そ、そうなんだね〜?それは、意外だな〜」
やばい。不意打ちすぎてちょっとどころじゃ済まされないくらい顔が熱い。
後輩くんの立っている方向とは違う所を向いて、両手で顔を覆った。自分の冷たい手が今はちょうどいい熱冷ましになる。
時折こういう事をナチュラルに言ってくるから油断出来ない。あれなのだろう。後輩くんは自分がかっこいいという事を自覚していないのだ。それに対して私は私が可愛いということを自覚してる。だから、それを自由に使えるし、盾にもできる。だけど、後輩くんの場合は自覚していない分意識して使えない。その代わり、時折大砲のような威力で無意識のうちに使うのだ。それがあまりにもタチが悪い。
「ずるい……」
「何がですか?」
「何でもない!さ、あと新年だから時計見とくよ!」
「あ、はい」
スマホの電源をつけると、後輩くんは私のスマホをのぞき込むようにしてずいっと隣に寄って来た。
やっぱり、ナチュラルイケメンはやばい……。
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