第39話
第39話です。
どうやらトイレ休憩のために道の駅に止まったのか、人の話し声が少し聞こえてきた。その声で俺は目を覚まし少しだけ目を開ける。
ちらりと横に目を見やると先輩はまだ寝ているようで、寝息もほとんど立てずに静かに寝ていた。
特にトイレに行きたいわけではないし疲れも溜まっているので、俺はこのままもう一度寝ることにした。先輩も目を覚まさないところを見ると熟睡しきっているのだろう。それを隣でガサゴソと動いて覚ましては悪い。
「ふあぁ」と一つあくびをするとまた眠りに入る。
夢は多分何も見ない。真っ暗な無の空間を漂うとでもしようか。
◆◇◆◇
不意に自然と目が覚めた。びっくりするくらいにスッキリとした目覚め。外を見てみるとどうやら道の駅に停車しているらしい。トイレ休憩と言ったところだろうか。
隣を見ると後輩くんがすやすやと寝ている。
(ふむ。またそばでも食べようかと思ったけど後輩くんが寝てるしなぁ)
一人で食べに行ってもいいのだが、ご飯ほど一人なのが寂しいことはない。どうせなら誰かと楽しく食べたいものだ。
ひとしきり頭の中で悩むと私は財布を持って立ち上がった。他の人と後輩くんの邪魔にならないように静かに通路を通り外に出る。
ひんやりとした空気に頬を撫でなれながら私は一直線に青や赤、白といった明かりが煌々と点いている筐体に向かった。それに小銭を投入し緑に光るボタンを押す。ガタンと音を立てて落ちてきたものを取り同じ動作をもう一度繰り返すと、私はそれを両手に大切に持ちながらバスに戻った。
自分の席までまた静かに帰ると二つ持っているうち、一つを寝ている後輩くんの手にしっかりと握らせた。
目がパッチリ覚めたのなら無理に寝る必要は無い。いっその事最後まで起きておこう。そのために私はこのあったか〜いコーヒーを購入したのだ。
コーヒーのアルミ製のキャップを捻って開けると私はこくりと頷き一口飲んだ。口には馴染み深い苦味が広がる。それと同時に頭が冴え渡るような感じがした。
あとはイヤホンを耳に指し、音楽を流せば夜更かし体制の完成だ。
流れてくるのは私の好きな5人組のグループの楽曲。イギリスのグループで女の子から絶大な人気を誇ったあの、一方通行なグループだ。特に流れてきている曲が明るい曲調なので朝に向かうこれからには丁度いい。
「Magicはお好きかな?」
ボソッとそう呟きながら私は窓の外を眺め続けた。
空の向こうはまだ暗くて山の影だけが見える。それだけ見えるのはなんだかもの寂しくてだから、私は他に何か見えないか探した。
「あ……」
目に映るのは白く光る月。まん丸ではなく欠けた形の月だ。
綺麗な形ではなく歪な形をしている。だけど、歪な形だからこそ私は月というものが好きかもしれない。それはきっとまるで自分の欠点を全てさらけ出しているように見えるからなのだろう。まぁ、月はかけていても全然欠点なのではないが。むしろ余計に綺麗に見えることまであるが。
そんな事を考えていたら、バスはゆっくりとエンジンをかけて動き始めた。どうやらここともお別れらしい。
さて帰ろうか。私達の街へ。
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