第37話
第37話です。
「やってきました、秋葉原!」
「おー」
パチパチパチと先輩の声に合わせて手を叩くと、先輩は「えっへん!」と胸を張った。
秋葉原。そこは東京にある一つの街。そして、様々な人が入り乱れ、また新たな世界を見せてくれる街でもある。
「ほら、後輩くんが欲しがってたパソコンを見に行くよ!秋葉原って他の電化製品専門店よりも安く売ってたりするからね。買い物上手のコツなのです!」
「へー、知らなかった」
「ふふん、後輩くんに新たな知識を教えるのも先輩の務め」
嬉しそうにそう言いながら先輩は足取り軽く歩き始めた。俺もそれに遅れないように着いて行く。
はてさて、特に何も考えずに先輩に着いて来ているわけだが、どこの店に行くつもりなのだろう。多分、見当をつけてるから何の迷いもなく先輩は歩けているのだと思うが。
「えーっと、こっちかな?」
(……本当に大丈夫かな?心配になってきた)
「先輩?」
「ん、どうしたんだい後輩くん?」
「もしかしてですけど、道に迷ってたりしません?」
そう尋ねると先輩は寒い冬にも関わらず、ダラダラと汗をかき始めた。まぁ、俗に言う冷や汗なのだが。
「そ、そんな事、な、なな、なぃよぉ?」
「説得力無いですって……」
「ふうぅ……」
頭を抱えて体を小さく丸めながら先輩は「ごめんなさい……道に迷いました」と謝る。
そんな姿を見ているととても責める気にはならない。というか全てを先輩に任せていたのだから、俺には文句を言う権利がある訳ではない。なので俺は先輩の頭に手をポンッと載せるとゆっくりと撫でる。
「大丈夫ですよ。一緒にゆっくり探しましょ」
「うぅ……ごめんね」
「いいですって。さ、行きましょ」
先輩の手を握ると俺は優しく先輩を立ち上がらせた。
「先輩なのに……私が先輩なのに……リードされてる」
「ははっ、別にいいじゃないですか。年上が年下を引っ張らないといけないなんていう法律があるわけじゃないですしね」
「でも、私だって後輩くんを引っ張っていってあげたいしさ……。私後輩くんに頼りっぱなしだし……」
しょぼんとしながらそう言うので俺はどうにもその姿がいじらしく感じてしまい、もう一度頭を撫でた。先輩は切れ長の瞳を少し濡らしながらこちらを見る。
「前にも言った気がしますけど、頼ってくれても別にいいですよ?男心としては年上の女性に頼りにされるのは中々心躍るものがありますし、何よりその相手が先輩ってなるとむしろ誇らしいです」
「そ、そうなの?」
「はい」
「そっか……なら、もっと頼ろっかな」
可愛らしい笑顔を浮かべると先輩は「えへっ」と笑った。
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