第33話
第33話
エントランスにて受け取った鍵を使い各々の部屋に入ると、俺達はそれぞれの時間を過ごした。部屋はしっかりと綺麗にされており、非常に過ごしやすそう。
荷物をベッドの横に沿う形で置くと、俺はひとまず防寒具等を外した。マフラーにコートに手袋。どれもこの冬の寒さから守ってくれた頼りがいのある仲間達だ。その仲間達を大事にハンガーにかけ、手袋はテーブルの上に置いただけだが、なおしておくと俺はソファに座った。
慣れない人混みの中で歩き続けた結果なのか、体には重く疲労が残っている。これで明日はまた数時間かけて夜行バスで帰るのかと考えると少し憂鬱だ。
「金無し学生だから仕方がないけどさ」
自嘲気味に笑うとグッと体を伸ばす。
あぁ、このまま寝てしまいそうだ。なんならいつもよりも気持ちよく寝れるのではないか。
内心でそう思いながら俺は目をつぶる。広がるまぶた裏の暗闇。そこに先輩の笑顔を描き出しながら、ゆっくり、ゆっくりと意識を睡魔の海に深く沈めた。
✲✲✲
しばらく意識を飛ばしていると、耳の中に微かにスマホの着信音が入ってきた。
自分の好きなアーティストを着信音にメロディに設定しているので、目覚めは割といい。
「んぁ……こんな遅くに誰?」
重い体を起こしながらテーブルの上に置いておいたスマホを取り、特に相手を確認せずに電話に出た。
『あ、もしも〜し?』
「どちら様?」
『後輩くんの大好きな先輩だよ〜』
「あぁ、俺の大好きな先輩でしたか」
「ふあぁ」とあくびを一つしながら俺は先輩に応える。
『そう君の好きな私さ』
「それで、何か用ですか?俺寝てたんですけど」
『え、もう寝てたの?早くない?』
「ん、確かにですね。まぁ、疲れてたんで割とすんなり寝れましたけど」
『へ〜、まぁ、何でもいいや。そんな事よりお話しようよ』
スピーカーの向こうからは先輩の楽しそうな声が聞こえてくる。
寝ていたという言葉を聞いていなかったのかなと少し思ったが、言っても聞かないだろうし、言わないことにした。
(最近先輩に対する決めつけが多い気がするけど、まぁ、仕方がない)
「いいですよ」
そう答えると当然始まる2人の会話。
いつも通り。何気ない屋上と変わることのない、そんな会話。
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