第29話
第29話です。
心地のいいジャズのBGMを聴きながらスマホを眺めていると「お待たせしました」という店員さんの声と共に俺達の朝食が届けられた。
黒いコーヒーと焼き立てトーストからは淡い湯気が立っている。
「わぁ、美味しそう!」
目をキラキラとさせながら先輩はじゅるりと唾を飲み込んだ。微かにキュルルとお腹の音が先輩の方から聞こえた気もする。
(あれ、そば食べてたよね?深夜に食べてたよね!?)
先輩のお腹の容量に驚きを覚えながら、俺はトーストにバターを塗った。
トーストの上にバターが載るとジュワァと溶け出した。テラテラと店内の電球に反射して、トーストがより一層美味しそうに見える。
パクリとトーストにかぶりつくと予想通りの味が広がる。
「美味い」
「よかったねぇ」
「先輩の方はどうですか?」
「ん〜?美味しいよ。さすがサンドイッチさんだよ」
ニッと笑いながら先輩はパクつく。
この人が何かを食べている時とギターを引いている時の姿は何回見ても見とれてしまう。
(美味しそうに食べすぎるんだよな)
◆◇◆◇
カランコロンと音を鳴らしながらカフェを出ると、俺達はひとまずスカイツリーに向かった。
先輩がどうしても行きたかったらしい。「お願い!スカイツリーに登るのが私の夢なの!」などと言われたら叶えてしまいたくなるだろう。本当の夢はアーティストのはずなのだけど。
「で、先輩はスカイツリーに登ったら何するんですか?」
「そりゃもちろんやっほー!だよ?」
「え?」
「え?」
俺にはどうしても先輩の言う事が理解できなくて困惑してしまった。
「先輩?スカイツリーの中からガラスに向かってやっほー!って言うんですか?」
「え?ガラスって空いてないの?」
「空いてませんよ?空いてたら危なすぎません?」
「うむぅ……た、確かに」
プクッと頬を膨らませながら先輩は「やっほー、出来ないのか……」とブツブツ呟いていた。
その様子を見た後に俺は思わず「ふっ」と笑ってしまう。
やっぱりこの人は可愛らしい。
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