第295話
第295話です。
どうやら先輩が家に来るらしい。ここは何かおもてなしを、と言いたいところなのだが、あいにく俺の体は風邪で参っている。風邪特有の筋肉痛と、喉の痛みで体力が常に限界だし、何より熱のせいでフラフラともする。到底誰かを招き入れれるような状況じゃないのだ。それに、風邪を引いたことは先輩にはバレたくない。バレたらきっと気を遣わせてしまうから。先輩なら、私のせいだって自分を責めかねないから。だからバレたくない。
そう思いながら、俺は何とかふらつく足で立ち上がると水を汲みに向かう。蛇口をひねりコップに水を注ぐと、俺はそれを流し込んだ。冷たい水が、喉を冷やして一時的にだが痛みを取ってくれる。
苦しみから少しの間逃れて、俺はほんのちょっとだが、楽になれた。
椅子に座りこんで、俺はどうしようかと悩む。
先輩が来るとなると俺は出来るだけ元気なフリをしないといけない。何より、風邪を引いたのは事実なので先輩に移すわけにもいかない。よって長居させるのもダメだ。あとはもう少しちゃんとした普段の私服に着替えないといけない。今の姿はあまりにもラフすぎる。
先輩が来るまでにしなければならないことをザッと頭の中で羅列してから、その一つ一つを潰していく。とはいえ、先輩からの連絡が来てからもう随分と時間が経っていた。よって、そう遠くないうちに来るはずなのだ。つまり、この全てを達成できるのかと聞かれればそうではない。という事で、ある程度の順位付けをしてから行動に移すの繰り返しをしていく。
「いたた……」
唐突に襲ってくる頭痛に目を細めながら、俺は何とか持ち堪えようとする。
次は部屋の掃除を、といったところでインターホンが鳴った。出ると聞き慣れた声がする
『後輩くーん、着いたよ!』
可愛らしい先輩の姿にその声。どちらもあるなんて、異性ながらに羨ましいなんて思いながら俺はオートロックを解除する。
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