第292話
第292話です。
「うっそぉ……」
両手には1週間分の食料を詰め込んだ大きなビニール袋が2つ。そして私の眼前に映る景色は真っ黒な暗雲と、視界を悪くする雨。
「傘ないんだけど……というか持ってても両手ふさがって使えないし」
かなりの絶望的な状況。スーパーを出る前にこの状況に気がついたからまだ良かったが、これがもし帰宅途中の道中で降られたら一溜りもなかったところだ。雨宿りする場所を見つけようにもすぐに見つかるとは限らないし、何よりこの袋がとても重い。走って帰るのもなかなか困難なのだ。
「不幸中の幸い?なのかな。……いや不幸だね」
ポジティブに捉えようとしたが、この場を全く動けてない状況を鑑みるに全くいい状況とは言えない。
どうしようかと悩みながら、私はスマホで誰かを呼べないかと思いつく。かメグさんなら多分暇だし来てくれるはず。そう思いながら私は右手に持っていた袋を左手に一時的に持ち替えてスマホを探す。
「……あれ」
パーカーや下に履いているジャージのありとあらゆるポケットに手を突っ込んで探ってみるが、あの愛おしい電子の板の感触が全くない。あるのは財布のと家の鍵の感触くらい。
「……嘘でしょ」
どうやらスマホを家に置いてきたらしい。
でも確かに玄関までスマホを触っていた記憶があるのだが何処で……もしかして落としたのだろうか。
と、不安に思うが、よくよく思い出せば靴を履く時にスマホを置いたのを忘れていた。私はその後靴を履けたことに満足して家を出てしまっていたのだ。
落としてないという事が分かっただけまだマシではあるが、それでもキツいものはキツい。
単純に雨が止むのを待てればいいが、この雨足の強さだとこれ以降も強くなる一方のように思える。今日の天気予報を見ていないがゆえに何時まで降り続けるのかも分からないのは本当に痛手だ。
「あぁ……」
頭を抱えたくなりながら、私はスーパーの壁に寄りかかる。軒のおかげで雨を凌げているだけまだマシとしよう。
溜息をつきながら私は傘を差して歩く人を羨ましく思う。
こんな雨の中、自由に歩けるのがこれだけ素晴らしいとは思いもしなかった。
次からは必ず折りたたみを持ち歩こう、そう決意する。
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