第28話
第28話です。
「はてさて、まずはどうしたものか」
スマホの画面とにらめっこをしながら先輩はそう言った。長時間スマホを眺め続けているせいか、先輩の瞳は凄く細くなっている。
「とりあえず歩きません?」
「だねぇ」
ゆっくりと歩き始めながら俺もスマホでマップを開く。近くにカフェ等があればそこで朝食を摂りつつ作戦会議ができるからいいのだが、はたしてあるのか否か。
近くのカフェと調べると約十三件ほどヒットした。
うん、全然カフェあった。田舎感覚で考えてたから分かんなかったけどそりゃそうか。ここ東京だもん。
「先輩」
「何だね後輩くん?」
「ひとまず近くのカフェで朝食と作戦会議をしましょう」
「おぉ!作戦会議!かっこいい!」
中学生男子のように目をキラキラと輝かせながら、先輩はぴょこんと跳ねる。
「んでもって、カフェの場所は調べ終わってますのでひとまずそこに向かいましょう」
「りょーかい!」
ピシッと敬礼の真似をすると、先輩は俺の後ろをちょこちょこと着いてきた。身長が俺の方が高い分何だか妹を連れているような気分になるが、この人は先輩なのだという事を思い出すと少し変な気分になる。
(先輩にしては子供っぽいんだよなぁ……)
◆◇◆◇
カランコロンと音程の高いベルの音を聴きながら店内に足を踏み入れた。全体的にアンティークな作りの店内。緩やかにかかるBGMのジャズが心地いい。
案内された席に座ると俺達は大きめの荷物を足元に置いた。
「ふぅ。さて、何食べよっかなぁ」
メニュー表をパラパラと捲りながら先輩は「これ美味しそうだな……」と言ってじゅるりと唾を飲み込んだ。
深夜の3時にそばを食べた人の食欲ではないなと思いながら、俺ももう一つのメニュー表を見る。
やはりシンプルにトーストにするのが一番だろうか。コーヒーも頼んだら丁度いい気がする。
「後輩はどれにする?」
「俺はですね、トーストとコーヒーのシンプルなやつにしようかなと」
「なるほどね。私はどうしよ。サンドイッチでいいかな」
「いいんじゃないですか?お腹がまだ空くようであれば追加注文すればいいですし」
「だねぇ」
そう言ってから俺達は店員さんを呼び注文を済ませる。
「さて、作戦会議といこうか」
どこぞやの碇さんの様に、肘をテーブルにつき手を組み先輩は俺の事を見据えてくる。切れ長の目がさらに切れ味を増したように見えた。
「それじゃあ先輩はまずここだけは見ておきたいとかってありますか?」
「うーん、スカイツリー?」
「あ、観光する気ですね」
「そりゃもちろん。欲を言えば新宿とか池袋とか、秋葉原とかにも行ってみたいかなぁ」
「遊ぶ気満々じゃねぇか……」
(あれ?将来ここに住むから、下見とかも含めた今回の上京だよね?下見する気ないのでは?)
一抹の不安を少し感じながら、俺はコホンと一つ咳をすると「じゃあ」と言って話を切り出す。
「ひとまずスカイツリーは後半の方に行きましょう」
「やったぁ」
「それで、今決めるのは前半のメインの方です。東京の街並みとか、いわゆる下町みたいな雰囲気のある場所とかも見ておかないと、いざっていう時に困りますからね」
「なるほど。後輩くんは頼りになるね!」
「先輩が頼りなさすぎるだけです」
「んにゃっ!?」
先輩の頭の上に猫耳の幻影を確認しながら俺はビシッと先輩の方に指をさした。
「まぁ、俺にとって頼れる先輩にでもなってて下さい。なってくれたら頼りまくりますから」
「えぇー、頼られまくるのも嫌だなぁ」
「現状は一切頼りませんけどね?」
「それも嫌だなぁ」
「うんうん」と頭を揺らして先輩は悩んでいる。
こんなしょうもない事で悩む暇があればもっと将来のために今日を有意義に過ごしてくれと思うが、まぁ、言っても仕方がないので言わない事にした。
頑張って下さい先輩。
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