第287話
第287話です。
近くの公園で3人ベンチに座りながらゆっくりしていると、タッタッタッとレンガの敷きつめられた歩道を蹴る足音が聞こえてきた。音のする方を見れば額にほんの少し汗をかいた後輩くんの姿がある。
本当に来てくれちゃった。
そんな事、後輩くんの事をよく知っていればすぐ分かることなのに、それでもそう思う。
「先輩っ、大丈夫ですか!?」
「おー、よく来てくれたぞ京弥。カオリさんは疲れて眠たすぎるから歩くのもままならないんだよ。でもタクシー呼ぶにはお金がかかり過ぎるからって事で私が代わりに京弥のことを呼んだって訳」
「つまり俺は先輩から直々の指名ってことで?」
「いいや、私の采配」
「あ、なんだ……ちょっと残念」
「おい、それは私に失礼だろ」
そんな2人のやり取りを横で見ながらちょっと羨ましいなって思う。
私だって、後輩くんとあれくらい仲良くおしゃべりできるもん。今は眠たくて頭回らないけど。でもできるもんっ!
声には出さないが、私は必死にその感情を表情で伝えようとする。けど、夜の公園では表情が見えにくくて誰も気付いてくれない。
「まぁ、とにかく先輩の事は俺がおぶって帰ります」
「助かる。ほら、カオリさん京弥の背中に乗ってください」
目の前では腰を低くして私が乗りやすい体勢になってくれている後輩くんの姿。私はゆっくりと体重をかけて体を任せる。そしてちょうど後輩くんの耳元の辺りで「ありがと……」と小さく呟いた。
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