第282話
第282話です。
ガチャっと玄関扉の鍵が開く音が聞こえる。私はベッドから降りてとたとたと玄関の方に向かった。
「ただいま戻りました」
「お帰りー!お疲れ様ー!!」
待っていましたと言わんばかりのトーンでそう言って私は後輩くんを手招く。本日、ついにドラマの主題歌を担当することを話すのだ。まだギリギリテレビでも情報解禁していないので、確実に後輩くんは知らない。
「ささっ、ひとまず座ってくださいな」
「は、はぁ。……ここ、俺の家なんだけどなぁ」
「さて、私から後輩くんに1つ大切なお話があります」
「た、大切なお話?」
「そうっ!とっても大切なお話!」
私の今から話そうとしている"重大"な内容と、テンションがちぐはぐなためか、後輩くんは少し困り顔。思わずその表情に笑ってしまいそうになるが、そこは咳を1つして誤魔化す。
私はその場に直り、改まった表情で後輩くんと向かい合う。
「私、田舎から出てきてさ、大阪で実績積んでこうやって東京まで進出できたじゃない?」
「そうですね」
「それは、間違いなく後輩くんの尽力も要因の1つだと思うの」
「いや、だからそんな事は」
「そんな事はあるよ。それは言い切れる」
強くそう言うと後輩くんは言葉を切った。
「そんな私達に力を貸し続けてくれた後輩くんにだからこそ、私は真っ先に伝えたいと思ったの」
「な、何をですか?」
「私達Chatnoirはね……」
後輩くんが固唾を飲み込む。その音がここまで聞こえてきそうな程に緊張感を伴っているのが分かった。
「私達Chatnoirは……来季のドラマで主題歌を担当することになりましたっ!!」
「……え、主題歌?」
「いえーす!一発目に出したアルバムがプロデューサーの目に止まってオファーされたの!」
「まぁじですかっ!?」
そう言ってたいそう驚いた表情を見せてくれる後輩くん。
ぷへへっ。そう、この顔が見たかったのだよ。
「ある意味目標の1つが叶ったわけだからね、Chatnoirの道のりを一緒に歩んできた後輩くんには私からちゃんと伝えるのが礼儀だと思ってさ」
「そういうことでしたか……はぁ、驚き過ぎて疲れた」
あははとカラカラしたような笑い声でそう言いながら後輩くんはベッドに転がる。
「ドラマの主題歌かぁ。人気、出てくれるといいですね」
「うん。私もそれを祈ってる」
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