第277話
第277話です。
曲名が決まってからは今までの私とは別人のように作詞作業に没頭していた。休息はほとんど取らず、缶詰状態。時折心配そうにアスナちゃんやメグさんが部屋を訪れてくれるが、私はそれにただ大丈夫だと伝えるだけで、それ以外何もしなかった。
この部屋にギターの弦を弾く音がしなくなって何日経つだろうか。少し前までは毎日1時間くらいはジャカジャカと弦を弾いていたのに、今ではすっかり鳴りを潜めてしまっている。
けれど、私の中では常に弦の音が聞こえていた。
脳内ギター。曲を作る時のイメージをしやすくするために、今までの経験値から作り出した想像上のギターだ。便利な点と言えば実物を必要としないのに加えて、自分の好きなギターのデザインに変え放題といったところか。
「あっ……折れちゃった」
筆圧が強くなってきているのか、さっきからよくポキポキとシャーペンの芯が折れている。
歌詞を書き始めてから数日。一体何本目のシャー芯交換だろうか。普通に書いている分には決してこれだけ消費する事はないのに。
私はシャー芯ケースの蓋をスライドさせて開けると、逆さにして一本取りだした。シャーペンの先端からスっと差し込みきると、私はシャーペンをノックして先端から少し出す。
「よし」
気合いを入れ直してからまた紙の上でシャーペンを滑らせる。
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