第275話
第275話です。
キッチンで晩ご飯の準備を始める後輩くん。そんな彼の事を横目に見ながら、私は紙とペンにじっと向き合っていた。
新しい曲の案の作成だ。
今回のものは私が勝手に作ろうと思って作っているわけではない。後輩くんにはまだ伝えていないが、これは事務所を通して届いた立派な依頼による書き下ろしの楽曲なのだ。先日初めてファーストアルバムを出したのがきっかけで、それがドラマのプロデューサーの人に目が止まったらしい。
話を聞いた当時は思わずドッキリか何かだと思ってしまったが、そんな心配はすぐに杞憂に終わった。何せ実際に事務所にてプロデューサーの方と打ち合わせまでしたのだから。あそこまで行くと、「あぁ、これは現実だ」と納得せざるを得ないだろう。
自分では楽しく上を目指してやってきた。その上でこうして確実に実力を認められていく中で、ある種一つの目標のようなことを達成できたわけだ。それには嬉しさを感じると共に、また一つ新たなステップに大きく踏み入れるのだという感覚が私の中に大きく生じる。
私は何について歌いたいのだろうか。
ふとそう思う。
色んなテーマ性を設けて今まで作ってきたけど、これと言った規則性は無かった。パッととの思い付きで考えて、それを形にして。それがこうして評価されるに至ったけれど、私はそれで本当にいいか?このままのスタイルでいいのか?
そんなふうにして私は自問自答を繰り返す。
何が正解か。何が答えなのか。
答えのない問いを探して私は一人自分の中のその中に、潜り込んでいく。
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