第273話
第273話です。
時が流れるのは非常に早い。それが特に新しい生活に慣れた頃だとなおのことだ。
大学に入学してからはや数ヶ月。暖かい春を超え夏になったかと思えば、今は段々と涼しくなっていく初秋の季節となっていた。木々の緑の葉も、段々と黄色や赤に紅葉し始め、太陽もとっぷりと暮れるまでの時間が段々と短くなってきている。
今日もそんな涼しい秋空の下、バイトからの帰り道の途中で俺はYouTubeに新しく上げる演奏の動画の構成を考えていた。
先輩達Chatnoirの新しい曲が「September」というもので、直訳してしまえば9月というなんとも意味があるのか無いのか分からない曲名だ。先輩に意味を聞いて見たりもしたが、返ってきたのは「響きがなんかいいじゃん!」といういかにもな答えだった。
まぁ、先輩らしくて好きなのだけれど。
曲は9月の秋が舞台となるラブソングだ。そしてこれは間違いなくラブソングなのだけれど、正確には失恋ソングでもある。冬に向かって冷えていく気温と同じように、あなたへの気持ちもだんだんと冷めてきてしまっている。そんな曲だ。歌詞を見て、そして先輩の歌を聞いた時に思わず「おぉ……」なんで声も漏らしてしまった。
にしてもよく曲を作る人はこういった発想がやまないなと俺は思う。曲は特に歌詞とメロディの二つを作らなければいけないから尚更だと思う。そう考えるとやっぱり先輩ってすごいんだな、なんて思いつつ、俺は自分の住むマンションに着いた。自分の住む階に着き、部屋の扉のドアノブに手をかけて捻る。すると扉は鍵を開けていないにも関わらず抵抗無く開いた。中にはよく見知った人の靴が一足。
「んぁ、おかえり〜」
「ただいまです」
靴の主はゴロりんとベッドの上に転がっていて、俺の顔を見てから二へへと楽しそうに笑っている。
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