第265話
第265話です。
「あっはぁ〜、スノードームカッコよかったぁ〜」
惚れ惚れと言うのが正しいのだろうか。店員さんはちゃっかり大量に購入したスノードームのグッズの入った袋を持っていない方の手をブンブンと振りながら楽しそうにしている。
確かにかっこよかった。スノードームというバンド名だからか勝手にイメージで綺麗でしっとりした曲でも歌うのかと思っていたのだが、半分ほどはガチガチのロックで固めたものだった。逆に言えば半分は想像通りだったのだけれど。しかし、歌の上手さは先輩にも引けを取らないなと思う。男性ボーカルながら女性並みのハイトーンで歌うことが出来て、かつ男性特有の低い声も出せるという非常に声域の広いボーカルだったのだ。歌を歌うというのは表現の一つであるから、表現の幅が広がるという点においてこれはかなり強いのだと思う。
「いやぁ、けどChatnoirが出てきた時の盛り上がり方は凄かったよね。さすが本拠地でどっしりと構えてるだけはあるよ」
そう、先輩達Chatnoirは東京のライブハウス拠点を移してからそう間もないうちに、そこのライブハウスでナンバーワンの人気を誇るバンドになれたわけだ。そのおかげなのか、Chatnoirに関しては出てくるだけで場が盛り上がってしまうのだ。
つくづく人気というのはものすごいものなのだと認識させられる。俺には高校時代に大した友人がいたわけでもなく、人からの人気があったのかと聞かれれば首を捻らざるを得ないから、余計にそう思うのだ。
「いやぁ、それにメグさんやっぱりかっこいいなぁ。ドラムもめちゃくちゃ上手いし、私には到底無理だなぁ」
「頑張ってみてくださいよ」
「え〜?さすがに無理だよ〜」
笑いながら店員さんはそう言って次のライブハウスの場所を調べる。
今からもっと夜が深けていく。そうなるにつれ人とのすれ違いは減るが、代わりにイベントは盛り上がっていくのだ。
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