第264話
第264話です。
イベントの当日。俺は参加するためにChatnoirが拠点としているライブハウスに向かった。もちろん拠点にしているところなので、前回来た時と向かうルートは同じ。
ライブハウスには既にたくさんの人が訪れている。俺は先輩から送られてきていたチケットの画面を表示して中に入る。
前回来た時とは少し違う内装。イベントに関するポスターや、スタッフの来ている服の背中にはイベントのロゴが描かれていたりと、全面でこのイベントを主張しているのが分かる。とはいえ、先輩達の演奏は先輩達の演奏でいつもと変わらずかっこいいのを聞かせてくれるはずだ。
重低音のBGMが流れる中、俺は前回来た時と同様に飲み物だけ買っておく。しばらくここのライブハウスで見た後にまた別のライブハウスに行く予定なので、前回よりも飲み物のサイズはワンサイズ小さめだ。
「あれ?お兄さん?」
チューっとストローを使って飲んでいると隣から俺に声をかけてくる人がいる。見てみるとそこには前回のライブ帰りに楽器屋さんの前で話したあの店員さんが立っていたのだ。
「あ、店員さんも参加したんですか」
「そうですよ〜。なんたって普段とは違って1つのチケットでたくさんのライブハウスに行けますからね!こんなお得で楽しいイベントなかなかないですよ!」
ふんすと鼻息荒くしながら熱弁する店員さん。
相当好きなんだな、なんて思いながら「でも、確かに」なんて呟く。
「ところでお兄さんはどのバンドが目当てですか?私はですね〜、スノードームっていうバンド目当てに来たんですよ!もうかっこいいのなんのって!」
「へー」
一応相槌を返してはみるが、実際のところそのスノードームとかいうバンドについて詳しくないので俺は大した反応もできない。
「俺はChatnoirが目当てですよ」
「Chatnoir!!ガールズバンドの子達ですよね!私も好きですよ、特にあのドラムのメグさん!寡黙な近寄り難いオーラがこれまたかっこいい!しかもボーイッシュに加えた超綺麗な美人顔!あのバンドはメンバー全員が異様なレベルで可愛いで有名ですからねぇ。お兄さんはどの子が一番好きなんですか?」
「どの子、ですか」
バンドのメンバーとしてならば、それは当然箱推しという立場になるだろう。何せ俺はChatnoirのサポートをする側の人間なのだから。けどそれを除いたならば……、
「ボーカルのカオリさんですかね」
「カオリさんいいですよねぇ。歌も上手いし、可愛いし。しかも、MCとしての才能もあるから本当にバンドを組むために生まれてきたような人ですよ」
「ですよね。俺もそう思います」
しみじみと頷きながら俺は店員さんとそのままライブが始まるまでの間、話を続けるのであった。
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