第25話
冬休みが始まって2日が経った。
理想ならばまだ布団の中でぬくぬくと丸まっていたい時間帯なのだが、今はまだ日も出ない内に夜行バスのバス停にて先輩を待っていた。
「寒っ……」
今日の最低気温は2°と予報していただろうか。辺りにはヒラヒラと雪が舞っていて、余計に寒さを増幅させているような気がした。
(何で深夜0時から東京に向かうのでしょうか)
内心ではそう思いながらも、その理由は先輩の付き添いアンドボディガードで、あとは夜行バスに乗るからという分かり切ったものなので、そこから何かを考える事は特に無かった。
「やぁ、後輩くん」
「ども」
黒いキャップの鍔をクイッとあげて顔を見せる先輩と目があった。
「さ、私達が乗るバスに向かうよ!」
「了解です」
もたれかかっていた柱から背中を離すと、俺達は座席を取っておいたバスに乗り込む。
中には既に何人か乗っており、なんなら中にはアイマスクをしてもう寝ている人もいた。
「私たちの席はーっと……あ、ここだ」
2人分の並んだ席。先輩が奥で俺が通路側だ。
先輩の荷物を受け取り上の荷物置き場に置き、自分の分も置くと俺達は座席に座った。
「ここからだいたい6時間の旅かぁ。体痛くなるかもね」
「かもですね。俺は一応全部寝るつもりなんで起きた時にそのダメージを負うだけで済みそうですけど、先輩はね。うん」
「な、なんだい!?その反応は!」
いや、先輩は明らかに楽しみ過ぎて寝れない子供のようになっているのだ。ソワソワとして寝れないオーラが漂いまくっている。
「まぁ、そういう事で俺は寝ますね」
「そういう事ってどういう事!?」
「先輩も寝るように」
先輩の唇に人差し指を当てると、俺は持参したアイマスクとイヤホンを装着して寝てしまう。
イヤホンの外からは微かに先輩の焦ったような声が聞こえたが、気にしない事にした。
✲✲✲
数時間経ってから止まった道の駅。ここでしばらくの間トイレ休憩を取るらしい。
「くくっ……っはぁ!体ガッチガチだ」
「……」
「先輩も体痛くないですか?」
「……」
「先輩?」
なかなか返事を返してこない先輩の方を見ると、先輩は指を唇に当てたたまま少し頬を染めていた。
「どうしたんですか?先輩顔なんて赤くして」
「どうしたもこうしたも……ないよーっ!!誰のせいでこうなったのか!分かっているのかい!?」
「え、え?」
「ふーんだ!」
先輩はぷいっとそっぽを向くと、そのまま道の駅の方に1人で向かってしまった。
「え、ちょっと!?」
俺も後を追うように走り出した。
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