第256話
第256話です。
実感する。先輩達は俺が思っていたよりもずっとずっと遠くに行ってしまったのだと。
俺の周りに立ってこうして盛り上がっている人達は皆、先輩達の演奏に歌に魅了されて来た人達だ。そこに俺の力は何も影響を及ぼしていない。
間違いなく、あの3人の地力だけで今この空間を作っている。
「やっぱり、先輩は凄いなぁ……」
しみじみとそう思いながら、俺は周りの人に混じって一緒に盛り上がる事にした。ボケーッと突っ立っていたって仕方がない。今この瞬間を、先輩達の演奏で楽しむことが大切なのだ。
「ありがとうございまーす!という事で、一曲目はSTART Again!!!でしたぁ!さてさて続きましての二曲目は、鋭利な恋心!」
先輩達の楽曲は全て編集してそれぞれ1本の動画としてYouTubeにあげている。その中でこの『鋭利な恋心』は『START Again!!!』に次ぐ再生数を誇るChatnoirの中でも屈指の人気曲だ。
やはりそのメロディーが人の心を掴むのか、もしくは大人な歌詞が誰かの心に残るのか。その真偽は定かではないが、間違いなくそれが真実ではある。
こちらの曲も盛り上げる曲としてはピッタリで、全体的にみんな楽しそうにしている。けれど歌詞が歌詞なだけにこの曲では盛り上がらずに、じっくりと歌詞に聞き入って静かに噛み砕く人もいるのだ。
俺はどちらかと言えば後者にあたる。歌詞を噛み砕く、というほど俺の感受性が豊かなのかと聞かれればそうでは無いが、けれど先輩の書く歌詞には何かしらの意図がちゃんとあるので、俺はそれを少しでも多く汲み取りたいと思うのだ。
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