第244話
第244話です。
目覚めてからしばらく先輩の寝顔を眺めていると、「んん……」と声を漏らしてまぶたを薄らと開いた。寝ぼけ眼はぼんやりとしていてまだ焦点が合っていない。
「先輩、おはようございます」
「ん……おはょう……」
呂律も回らないのか、曖昧なふにゃりとした言葉で先輩は俺の言葉に返答する。そんな様子もまた可愛いななんて思うのだ。
「今、何時……なの?」
「今は朝の8時です」
「……8時?」
「はい」
先輩はそこから何かを思い出すように瞳を閉じるとしばらく静かになる。そしてはたと急に目を開いた。
「今日朝からバイトっ!」
「えぇ!?何時からですか!」
「10時から!」
「あー、なら間に合いますね」
冷静に考えてバイトの2時間前に起きたのなら、少し急げば余裕で間に合うだろう。そんなに焦ることではない。先輩も寝起きでそこまで頭が回っていなかったのか、「あ、本当だ」と言って「えへへ」と笑いながら起き上がった。
その後しばらく布団の上に座りながらお喋りした後に先輩が朝ご飯を作ってくれる。メニューはシンプルなトーストとスクランブルエッグ。そして焼いたベーコンだ。
「いただきます」
どちらともなくそう言いながら食事を始めていると、ふと先輩が俺の方を向いて尋ねる。
「そういえばさ、何で私後輩くんの隣にいたんだろ。私ベッドの上で寝てたはずなんだけど」
うむ、遂にそこに気が付いてしまったのか。
まるでサンタさんは誰なの?と聞かれた親のような気持ちになりながら俺は「コホン」と息を整えたあとに先輩の方を向く。
「んんっ……えーとですね、おそらくは先輩がベッドから落ちてきたのではないかと予想している次第であります」
「ゴロりんって?」
「おそらく」
「私、寝相そんなに悪かったっけなぁ」
意外にも気にした様子は見せず、あっけらかんとした感じの先輩。なんだ、変に気を使ってしまったのは俺だけか。
なんて思いながら俺はまた一口トーストを食べるのだった。
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