第229話
第229話です。
試験会場に向かう朝。
俺はピンポイントで今日に降る雪を恨みながら足跡を残して歩く。ひんやりと肌を突き刺すような寒さに体を振るえさせた。
周りにはコートを着た学生がちらほらと見えて、おそらく彼、彼女らも受験をする人達なのだろう。焦りからなのか、不安からなのかは分からないが「大丈夫……大丈夫……」とぶつぶつ呟く人もいれば、ずっと単語帳を見ながら歩くまるで二宮金次郎のような人もいる。
そんな人達に対して俺はただ寒いなと思いながら歩くだけ。緊張も回り回って何でもなくなってしまったのだ。それもこれも待ち受けにした先輩の写真のおかげ。緊張が体を蝕んでしんどくなりそうになってしまった時に見るようにしていたのだ。そうすると、一瞬で体が解れて表情が柔らかくなった気がして。そして心が落ち着きを取り戻す。
◆◇◆◇
時間が過ぎるのは早い。過去を見ていたって勝手に前に進むのだ。見るべきは未来のこと。
終わった強化の振り返りは共通テストの全日程が終わってからだ。と言っても俺は私立の文系なので今日で共通テストは終了するので、家に帰ってからでも振り返りはできるのだけれども。
既に受け終えた日本史と国語。特に日本史の手応えは悪くない。過去問と似た形式の問題が頻出されたのが功を奏して迷うことなく答えれた。あとは、アスナさんからのアドバイスで覚えたところも回答を導き出す際に役に立ったし、かなり期待できる。
そして国語は古文はほぼ満点でいいだろう。運良く読んだことのある文が引用されていたので内容が非常に入ってきやすかった。おかげで詰まることなく回答し終えて、現代文の方に多く時間を割けた。
あとはこれから行われる英語と、リスニングだろう。リスニングに関しては全神経を集中させなければ解くのは難しいので、始まる前に眠気覚ましをしておかなければならない。
俺には明日のテストがないのだ。だからここで後悔のないように存分に出し切らなければならない。
糖分補給のためのラムネと眠気覚ましのタブレットを口に含んだ。
「ラストスパート……行くぞぉ」
誰に言うでもなく俺はそう零す。
周りの物音や話し声に掻き消えそうになるほど小さな声。
けれど、この声は俺だけに届けばいい。
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