第222話
第222話です。
ハンバーグを平らげてから私は食器類を洗って片すと自室に戻る。
明日はバイトだけの日なので今からギターの練習でもしようと思うのだ。幸い今日はみんな家を出てるみたいだし、たまには音を出しての練習もいいだろう。
弦のチューニングをしてから私はまず軽くジャカジャカと弾いてみる。
「うん、チューニングはオッケー」
特に変な箇所がないことを確認し終えると私はChatnoirの最新曲である「走れ」の練習を始めた。この曲は曲名の通りかなり疾走感のあるもので、真っ直ぐな音であるもののテンポはかなり早い。油断すればすぐにでもリズムに置いていかれそうになるのだ。
「1、2、3、4……1、2、3、4……」
メグさんのドラムがないので基本のリズムはこうして口で言うことにしている。ある程度この口ずさみで感覚が掴めたらそのまま歌うことにシフトチェンジするのだ。こうして徐々に練習の難易度を上げていく事で腕を慣らし、ミスを減らすことが出来る。
ギターを弾き始めたからもうかなり経つので、初めは痛かった指先も今では何も感じなくなっている。おかげで細かい奏法にもチャレンジする余裕が生まれるし、何より昔よりも遥かに弾いていて楽しいという感覚が強い。
それこそ弾き始めた頃は痛くて痛くて後輩くんの前では我慢していたものの、本当は内心ずっと泣きたい気分だった。本当に豆はできるしシャーペン持つのも辛くなるし、コードを変えようとした時に指が切れたような感覚するし。まぁ、実際は切れてなくて安心するんだけど。
とにかく、慣れというのは偉大なのだ。
「次は……START Again!!!にしようかな」
Chatnoirの最初の曲で最も思い入れ深いこの曲。この曲は応援ソングとして作ったが、その実、私が実際に向けて歌ったのは自分自身なのだ。これからバンドとして活動していく中でまた新たな生活が始まる。だからこそのSTART、そしてもう一度の意味を持ったAgainなのだ。
「走れ」とはまた違った真っ直ぐな感情のこの曲は、弾いていて胸に何か熱いものが込み上がってくる。多分それはこの曲を作っている時の私の気持ち、またはバンドに対する私の想いだ。
弾き始めてからラスサビに入るとどんどん強く弦を弾くようになる。感情をピックにそのまま乗せるようにして。
「……っよし!」
最後まで弾き終えると、私の中には形容しがたい満足感が溢れる。思わず笑みがこぼれるのを自覚しながら私はこの満足感のまま眠ることにする。本当はもっと練習するつもりだったのだが、今日はここまでだ。続きは明日の朝から!その後バイト!
ぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!次回は14日です。