第21話
第21話です。
「何気に男の子の連絡先は初ゲットかもな〜」
スマホの画面に目を落としながら先輩はそう言った。
普通にそれを聞いて俺は意外だと思った。先輩は学校をサボりこそするものの、友達がいないわけではないとここ数ヶ月見ていて何となく分かる。というか、むしろ友達が多い方なのだ。
校内ですれ違った時には毎回違う友達が隣にいるし、俺とお昼を食べる約束をしていて、屋上に向かう際に先輩の姿を見た時も、クラスメイトらしき男子や女子に「ごめんねぇ、先約があるんだ」って言って断っていたし。
だから、男子の連絡先の一つや二つ、持っているものだと思っていた。
「後輩くんは女の子の連絡先初ゲットかな?かな!?」
先輩は少し鼻息を荒くしながらそう聞いてきた。俺は「どーどー」と先輩をなだめながら答える。
「いや、初ではないです。普通に女子の友達いますし」
「えぇ、という事は私は後輩くんにとって二番目の女かぁ」
そう言いながら先輩は「はぁ、残念だよ」とため息をついた。
「何か二番目の女って言われると、俺が遊びまくってる男みたいになるんでやめて貰えます!?」
「えへ♪」
あざとくこぶしを自身の頭にコツンと当てながら、先輩はリアクションを取った。
(なぜだろう。すごくデコピンしたい)
先輩のその姿を見ているとその欲求が湧いてしまう。
(鎮まれ、鎮まるんだ俺のライトフィンガー!)
厨二臭いセリフを心の中で叫びながら俺は先輩を見る。
今はスマホをぺちぺちと叩いて何かを打っているようだ。そして、先輩が最後にペチッと叩き終えると俺のスマホがピロンと音を鳴らす。
「ん?」
電源をつけるとホーム画面には『先輩からメッセージが届きました』と映し出されていた。
アプリを開きメッセージ画面に飛ぶと、先輩からのメッセージが見れる。
『これからもよろしくね!秘密の共有者の後輩くん!』
そのメッセージに目を通した後、先輩に目を向けると先輩は「ドヤぁ」と謎のドヤ顔を決めていた。俺は思わず「ふっ」と笑いながら先輩にメッセージを返す。
ピロンと鳴る先輩のスマホ。先輩は画面を開き俺のメッセージを確認すると、こちらの方をほっぺたを少し赤くしながらプルプルとさせた。
「な、何さ!『こちらこそよろしくお願いします。二番目の女の先輩』って!」
「ぷふっ……だって、さっき先輩が自分でそう言ったんじゃないですか」
「う……そ、そうだけどさ。本人に言われると、その少ーしだけね?少しだけ傷ついちゃうかなぁーってさ。ほら、私も一応可愛い女の子だし」
「自分で可愛いって言いますか」
「だって事実だし」
「何か変なこと言った?」と言わんばかりに首をこてんと傾げながら、先輩はこちらを見てくる。
いや、確かに先輩の言う通り先輩は可愛い。というかかなり可愛い。それこそ利根里さんと並んで、うちの高校の三大美女と言われているのだから。ちなみにもう1人は3年らしい。
そんな二つ名持ちの先輩が、自分で自分の事を可愛いと言っても何も間違いでは無いのだが、何だかそれだと先輩の可愛いに価値が無くなってくるようで嫌だと感じる。
「事実ですけど、可愛いっていうのは他の人に言ってもらいましょ」
「えー、恥しいじゃん」
「自分で自分の事を可愛いと言うのも相当だと思いますけどね!」
そうつっこみながら、俺は「はぁ」とため息をついた。
「まぁ、可愛いかどうかは置いておいて、まだ聞いてませんでしたね。先輩のバイト先」
そう言うとぽんっと手を叩きながら「そうだったね」と先輩は頷く。
「えーっとね、バイト先はねぇ、ここだよ!」
そう言いながら先輩は俺にスマホの画面を見せてくれた。ディスプレイ上にはそのバイト先だという所の画像が映っている。
(ん?ここどっかで見たことが……)
「ここね、オシャレな感じのブティックなんだけどさ。ちょうどバイト募集してたから試しに面接受けたらいけちゃった」
そうだ思い出した。ここはつい先日利根里さんと一緒に訪れたブティックだ。まさか、こんな偶然があるとは。
そう思いながら俺はこくりと頷いた。
「良さそうなとこですし、頑張ってくださいね。時々遊びに行くかもしれませんし」
「うん、遊びにおいで!」
頷きながら先輩は笑顔を浮かべた。
子供っぽい、それでいて可愛らしさを忘れないパーフェクトスマイルを。
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