第212話
第212話です。
「あぁ……やぁっと完成した」
ベッドの上に転がりながら私は伸びをして大きく息を吐く。
オーディションの二次審査に向けた曲の歌詞作りがやっと終わったのだ。後輩くんが訪れてきた日以降もなんども缶詰をしてそしてやっとの今日。
ちなみにだが、現在の時刻は深夜の5時。またの名を早朝5時だ。時刻が時刻なだけに、寝ていない私は体がもう限界に近い。
「くぁ……」
布団をかぶりながらリモコンで電気を消す。消すと言っても外からは既に日光が差し始めているのであまり暗くはならない。
「アイマスク……付けないと」
枕元にカーテンの隙間を縫ってちょうど日の光が差し込んでいるので、目がやられてしまわないようにアイマスクを付けた。普段から愛用している私の寝る時のお供だ。
今日はバイトも練習もないから存分に寝れる。あ、でも寝る前に歌詞が完成したこと教えないと。……でも眠いし、アイマスクも付けたしなぁ。……寝よ。
完成報告のことは一旦忘れて私は睡魔に誘われ意識を奈落に落とす。ふわふわとした無重力感が心地よくて、しばらくはこのままでいたい。
◆◇◆◇
「っすー……ん、見間違いかな?」
えーと、私が寝たのは今日の朝5時だったよね。うん、死にそうになりながらだったけどそれは覚えてる。それで、今の時刻は、10時と。えっ!?私5時間で起きたの!偉いっ!
そう思いながら私はバッとカーテンを開いた。
「あっ……真っ暗」
目に映る空は真っ暗で、道路を走る車もヘッドライトを点灯させている。
どうやら時計の短針はまるまる1周贅沢に回ったあと、プラスして5も進んだようだ。わーい、お得だね。
とか言ってる場合じゃない。盛大に1日潰してる。確かに沢山寝るつもりではいた。それは間違いないのだが、それでもお昼すぎには起きるつもりだったのだ。だが実際は沢山寝てる。
「あっ、報告まだしてない」
寝すぎたことにもショックを覚えながら、私はスマホを手に取ってChatnoirのグループトークにメッセージを送る。
『2曲とも作詞、完成しました』
ほんの数秒で既読が着きそれぞれスタンプ等が送られてくる。
枕元にスマホを置くと、私はもう一度ゴロンと転がった。
どうしよう、沢山寝た後だからか全く眠たくない。このまま行くと余裕でオール出来ちゃう。でもそれだと明日の練習とバイトに影響が……。
唐突に崩れた生活リズムに、私はかなりの焦りを覚えながらひとまず腹ごしらえをすることにする。
とは言いつつも、この時間帯に食べるものなんて全てカロリーの塊でしかないし、ここは美容のために買った炭酸水でお腹を誤魔化しつつ、おにぎりで我慢するか。
貧乏人のような生活になってしまっているが、これはもう致し方がない。事実貧乏人ではあるわけだし。
1人寂しく納得すると、私は部屋を出て1階に降りる。リビングルームには誰もおらず、私1人だけだった。
うぅ……この焦りの感情も誰とも共有できないのね。……なんか歌詞に出来そう。
もはや職業病としか言えない症状も片鱗を見せつつ、私はご飯の準備をするのだった。
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