第211話
第211話です。
黙々と静かに勉強に取り組む利根里さん。お互いに苦手科目が違うので、教えれる範囲は周りの邪魔にならないようにしながら教え合ったりして時間を過ごすのだ。
周りにいる人間は学生よりもおじいさんや、本好きそうな大人の方が多い印象だ。学生がいないわけではない。いないわけではないが、あまり目立たないのもまた事実。
「これ、分かる?」
隣に座っている利根里さんが少し体を寄せてそう尋ねてきた。見てみると、利根里さんが分からない箇所はちょうど俺がアスナさんに教わったところ。俺は自分がちゃんと理解しているのかを試すためにも、利根里さんにその箇所について説明をしてみる。
「……となるから、ここがこうなるわけ。例外もあるみたいだけどね」
「ふむ、なるほど。ありがとうね!」
小さくサムズアップしながら「ニッ」と笑う利根里さん。思わずこちらまで笑ってしまいそうになる。
笑顔1つで人に幸せを分けれる人は凄いと思う。例えば、利根里さん。例えば先輩のように。
◆◇◆◇
少しの勉強を終えてから俺達は図書館を去った。帰宅途中にコンビニによって飲み物を買うと、利根里さんに誘われて海に行くこととなった。
俺達の地元のこの時期の海は足だけ浸かる分には申し分ない程の気温だ。海岸に着いてからは荷物をベンチにおいて砂浜を歩いた後に、そのままじゃぶじゃぶと海に入る。
香る磯に体を馴染ませながら、海と一体になるような気がした。
そうだ……この感覚、先輩の歌作成に役立つかも。
そんな事を考えながら俺はひんやりと足元から冷やす透明度の高い海に目をやるのだった。
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