第20話
第20話です。短いです。
心に素直に。
利根里さんのその言葉を聞いた俺は、今屋上で仁王立ちしていた。見据える先にはキョトンとした顔の先輩が立っている。
「えーっと、バイトは決まったよ?」
「それは良かったです」
「うん、ありがと。それで、あの、どうしたの?仁王立ちなんかして」
「よくぞ聞いてくれました。先輩これですよ」
「どれ?」
俺はそう聞かれてからポケットに手を突っ込んだ。そして取り出すのは黒いディスプレイが目立つ機械の板。手の平サイズで毎日目にする。
「えっと……スマホ?」
「はい、スマホです」
「スマホがどうかしたの?」
大きく縦に頷き返し、俺はスマホの電源をつけて緑の吹き出しのアプリをタッチする。そしてその画面を先輩に見せるように向けた。
「連絡先ですよ」
「はぁ?」
何が言いたいのかよく分からないと言った風に先輩はそう言った。
「よく考えてみてください。俺と先輩が知り合ってからどれくらい経ちましたか?」
「えーっと、7ヶ月……かな?」
「そうです。7ヶ月です」
「それがどうしたの?」
こほんと一つ咳をすると、俺は先輩を見据え直す。その視線に気づいた先輩はぴしりと姿勢を正した。
「7ヶ月も経っているのに、俺は未だに先輩の連絡先を知らないんですよ!」
「そういえば、確かに」
「今までは必要が特にありませんでしたけど、これからは先輩の将来のためにも情報交換が必須です」
「ほう」
「だから、連絡先を交換しませんか?」
「なるほど。つまりは新手のナンパだね?」
「違いますね」
即修正を入れた後に、先輩はゆっくりとブレザーのポケットからスマホを取りだした。水色の映えるスマホケース。その中にあるディスプレイを開くと先輩は俺に画面を見せくれた。
「ほい、QRコード読み取ってねぇ」
「ありがとうございます!」
カメラ機能を利用し俺は先輩のIDを取得する。
画面には先輩の名前が書いてあるアイコンが出てきた。それを友達登録すると、名前を『先輩』に書き直す。
「これで……一歩踏み出せたかな」
ぼそりとそう呟きながら、俺は前に立つ先輩にゆっくりと向き直った。
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