第207話
第207話です。
ホクホクとしたゲーム大好きアスナさんには全く勝てなかった。俺の行動パターンを全て把握しているアスナさんは、俺がキャラクターを操作し切る前に弱攻撃を加えて行動キャンセルをして、一気に畳み掛けられるのだ。おかげでゲームが終わる頃には俺は灰と化していた。
「文字通り手も足も出なかった……嘘でしょ」
「ふっ、京弥は行動パターンが単純だからな、火力ゴリ押しで攻めようとするから簡単に隙が出来る。畳み掛けやすくて何よりだよ」
「うぐぅ……」
確かに俺の戦略は単純明快な火力ゴリ押しなのだ。というか、ゴリ押ししか何も思い浮かんでいないだけなのだけれど。
はたしてどうしたら俺が勝てるのか。
「まぁ、練習してきたまえ。次は別のゲームをするぞ」
「あ、はい」
「次は狩りにでも行くか」
「狩りかぁ……」
「ん、嫌か?」
「いや、嫌とかじゃなくて、家に俺も同じの持ってるんでそっちのデータがあった方がもっと役に立てるのになぁと思っただけで」
実は何気にアスナさんの提案したゲームはやりこんでいるので、そっちの方が効率もいいと思うのだ。
「なら、このゲームは京弥が家に帰ってからにするか」
「じゃあどうします?」
「んー、じゃあブロックのやつにするか」
アスナさんはそう言ってソフトを変えた。
俺達はまたコントローラーを手にすると、前回の途中からワールドをスタートさせた。
「今日はどうします?」
「トラップタワー作るぞ」
「何のトラップタワーにするんですか?」
「ゴーレムで」
「じゃあ、建設現場は村の中心ですかね」
「だな」
軽く紙に工程と必要材料、そして外見のイラストをおまけ程度に描くと、俺達は作業に入った。
必要な石を大量に掘りに行き、そして石のブロックをハーフ状にクラフトし直す。そして、水入りバケツも二つ用意して無限水源を作ると、トラップの必要な部分の所に流した。
作業を黙々と続けながら俺達は定期的にバンドについて話す。今先輩が缶詰をしている最中である事、オーディションにチャレンジする事、レベルが格段に上がった事など。
「カオリさんがやっぱり凄いよ。あの人はセンスがあっただけに加速度的に上手くなってる。私も今はそれに食らいつくので精一杯だ」
「アスナさんが食らいつくので必死……」
「おい、なんだその意外そうな目。私だって頑張らないと精度は落ちるし上手くならないんだぞ」
「で、ですよね。だけど、正直意外だと思ったのは本心です」
「というと?」
「その、初めて会った時からオーラみたいなものを感じたから……なのかな」
実際にそのオーラの様な雰囲気に俺は会った時から飲まれ続けているのだ。だから、アスナさんから頑張るという言葉が出たのは驚いたのだ。
「オーラか……私にそんなものあるんだな」
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