第205話
第205話です。
バンドの練習を終えてそれぞれ帰る準備をする。
メグさんと先輩は同じシェアハウス住みなので俺とアスナさんとは帰宅路が逆方向だ。
「じゃあ、後輩くんまたね。アスナちゃん、後輩くんの事をよろしくっ!」
「了解です。京弥の事は任せてください」
「……何だろう、この保護者に預けられる子供感の否めないこの感じ」
自分の年齢が実は幼稚園児と何ら変わらないのではないかと思い、生まれた西暦から現在の西暦まで逆算してみるが、あら不思議、ちゃんと18だった。
兎にも角にもそんなこんなで先輩達と別れを告げると、俺はアスナさんと一緒に歩き出す。
今日は割と早い時間からの練習だったので日はまだ落ちていない。しかし、ずっと気を張った状態で練習をしていたアスナさんは疲労が溜まっているようで時折あくびをしていた。
「眠……」
「お疲れ様です」
「んぁ?何が」
「いや、バンドの練習が」
「あぁ……眠いのは昨日夜更かししたからだぞ」
「……じゃあ、さっきの言葉は取り消します」
「えぇー、別に取り消さなくてもいいじゃんか。私が頑張ってたように京弥は見えたんだろ?ならそれでいいじゃん」
「いや、そうだけど……なんかなぁ」
お疲れ様の安売りをしたくないというのがおそらく一番の理由なのだが、でも実際アスナさんが手を抜いているようには見えなかったわけで、つまりは頑張っていたということ。だからお疲れ様を言うに値するのだとは思うのだが、しかし本人は夜更かしのせいで疲れてると言ってて……。つまるところ俺は自分の価値観での判断が少し間に合わなくなっていた。
まぁ、何でもいいか。
帰路についてから二度目となるアスナさんのマンションに辿り着く。相変わらず大きいところだ。俺の住む田舎にこんなに高い建物は見たことがない。冗談抜きで近くの山くらいあるのではないだろうか。
エレベーターを使い、目的の階で降りるとそのまま部屋へ直行する。晩ご飯はデリバリーサービスを利用するらしい。
「何食べたい?」
「俺は別になんでも」
「ピザ、フライドチキン、寿司、グラタン、牛タン弁当の中だったら?」
「じ、じゃあ牛タン弁当で」
「了解。いちばん高いやつな」
「えっ!?」
「ポチッと」
アスナさんは自分の口で効果音を発しながらスマホの画面をタップした。
もちろん自分の分の料金は後で俺が払うのだが、安易に牛タン弁当を頼むのは良くなかったかもしれない。何せ高いものはとことん高い商品だ。俺の小遣いが吹き飛ぶ。
どうしようもない焦りを感じつつ、今はただひたすらにテーブルを借りて勉強する事に集中した。隣では携帯ゲームに勤しむアスナさんがいて羨ましい。
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