第200話
第200話です。
別にライブの本番という訳でもないのに、1人お客さんがいるだけで私達は思わず本気の演奏をしてしまった。おかげで終わる頃には肩で息をしている。
シオンちゃんは満足してくれたのか、椅子から立ち上がってパチパチと1人でたくさんの拍手をしてくれた。私はそれが素直に嬉しいと感じながら、にへっと笑う。
「どうだったかな?」
「す、凄かったです!もう何か、とにかく凄かったです!」
語彙力の低下が著しく、必死にその感情を表そうとするその姿がとても可愛らしく映る。
「満足してくれたのなら良かったよ」
「はいっ!大満足です!」
満面の笑みを浮かべながら頷くシオンちゃん。私は立ち上がりながら彼女の元に近づくと、この練習の後に行くご飯に着いてこないかと提案した。
「え……い、いいんですか?」
「別にいいよ〜。1人増えたとて何かが大きく変わるわけじゃないし、何より多い方が楽しいしね」
そう話すとシオンちゃんは一度アスナちゃんの方を向く。アスナちゃんはアスナちゃんで特に何を言うでもなく一度だけ縦に首を振っただけだった。
こういう時は寡黙な大人の雰囲気を出せるからアスナちゃんには少し憧れたりする。年下なのに、年下だと思えないところとか。
「じ、じゃあ、お邪魔させていただきます」
ゆっくりと頭を下げながらアスナちゃんはそう言った。
「うん!お邪魔したまえ!シオンちゃんにはChatnoirのもう1人のメンバーについても話してあげたいしね!」
「もう1人?」
少し不思議そうな表情をしていたが、私はここではそれに触れない。触れるのはあとのお楽しみだ。
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