第199話
第199話です。
ギターのチューニングをしてメグさんとスタジオにて自主練に励んでいると、学校帰りのアスナちゃんが少し遅れてやってきた。その後ろには初めて見る女の子が立っている。おそらく昨日アスナちゃんからの電話にあったクラスの子だろう。
「少し遅れました」
「ん、大丈夫だよ〜」
実際アスナちゃんが遅れたのは1分程度の話。こんなの誤差に過ぎないし、大半の人は気にしないだろう。それよりも私はその後ろのこの方が気になって仕方がない。
「あ、カオリさん。この子が昨日電話で言った子です」
「お、お邪魔します」
慣れない空間に、見知らぬ年上が2人もいるせいか女の子は緊張したような面持ちだ。
ここはまず、先輩らしく名前を聞いてコミュニケーションを取ってみようかしら。
「私の名前は赤坂香織。カオリさんでいいよ。それとドラムの彼女がメグさんね」
「あ、はい。私は佐野原紫音です。今日は急にすみません。見学したいだなんて」
「別にいいよ〜。たまにはこういった刺激というのも歌詞作りには役立つし、何よりかっこよく見せたいからね。いつもよりも気合いが入るってものさ!」
快活に笑いながらそう言うとシオンちゃんもだいぶ気が楽になったのか、「ふふっ」と柔らかく笑ってくれる。
「ところでシオンちゃんはバンドが好きなの?」
「はい。親の影響もあって中学に入った頃からずっとラジオとかで色んなバンドを見つけては追いかけてます」
「へぇ〜。特に好きなバンドとかあるの?」
「Doctor dogとかが最近はよく聴いてますね」
「Doctor dog!」
Doctor dogとは最近注目のバンドで、つい最近メジャーデビューしたことが記憶に新しい。さらに、私達と同じガールズバンドという事もあって、レベルは遥かに向こうの方が上だが、少し親近感を感じていたりもするのだ。
「いいよね〜。私も好きだよ」
「本当ですか!」
どうやらシオンちゃんは気をかなり良くしたらしく、嬉しそうにずっとニコニコと笑っている。
「さて、そろそろ私達の練習の様子でも見せてあげようかな。あそこにある椅子使ってくれていいからね」
そう言って指を差すと私は合わせ練習に入るための準備をする。私が話している間に、アスナちゃんもかなり準備は進めていたようなので、そこまで間を開けずにドラムのイントロが鳴り始めた。
何度聴いても惚れ惚れするようなメグさんのビート。
アスナちゃんの確実に上がっていくベースのスキル。
そんな2つの音を従えて、私がメロディーを奏でるのだ。
是非聴いて、そして覚えてもらおう。
私はマイクに近付くとシオンちゃんの方を向いてこう叫ぶ。
「私達がChatnoirだ!」
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