第198話
第198話です。
後輩くんとの思い出を頼りにぐるぐると歌詞を頭の中で紡いでいく。
今回は初めて東京に行った時のこと。後輩くんによるボディガードと初めての深夜バスの体験が印象に強い。ひんやりとした冬の日なので記憶に白っぽいモヤがかったようなイメージだ。
「吐く白い息とか入れてもいいかもね〜」
カリカリとシャーペンを動かしながらそう呟く。
しかし、後輩くんとの思い出に頼り始めた途端に、歌詞がスラスラ出てくるのは自分でもいかがなものかと思う。本当にさっきまでのあの苦悩は何だったのかという感じだ。
しばらく乗った勢いに任せてペンを走らせていると、テーブルの上に置いていたスマホがブーッと震える。見てみるとアスナちゃんからメッセージが届いていた。
『すみません。明日の合わせ練習にもしかしたらクラスの子が来るかもしれません』
『クラスの子?』
『はい。去年の文化祭でやったChatnoirの演奏を覚えてたらしく、色々と話を聞かれるうちにポロっと明日の事を漏らしてしまって』
『なるほどね』
『やっぱり来ないように強く言った方がいいですよね?』
『いや、来る分にはいいんじゃない?』
『そうですか?集中にも影響が出そうですし、何よりその子バンドこそ聴けど、楽器とかの機械に詳しい訳じゃないんで、もしかしたら何か変に触って壊すかも』
『その子、物凄い言われようだね』
メッセージの後に苦笑いをうかべる猫さんのスタンプを送ると、アスナちゃんから『真面目な話ですから』と真顔の絵文字が送られてくる。
まぁ、確かにアンプとかを壊されたらひとたまりもないが、椅子にさえ座ってもらえたら変に動くこともないだろうと私は思うのです。
『まぁ、ひとまず連れておいで』
私はそう返信するとまた歌詞作りに勤しみ始めた。
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