第195話
第195話です。
3年生になったということは本格的な受験勉強も同時にスタートするということ。去年までの過ごし方とは打って変わって、家に帰っては毎日勉強なので早速音を上げそうだ。しかし、そういう時こそ先輩の事を思い出すようにしている。するとどうだろうか。先程まで辞めたくて仕方がなかった勉強がみるみるうちに楽しくなってきたではないか。俺はこの方法を先輩メソッドと呼ぶ事にした。
「まぁ、ただの自己暗示でしかないけどな……」
自己暗示をかけられる俺自身は当然これが自己暗示の類だということを知っているので、なんとも悲しい気しかしない。空想の先輩で我慢するとは一体何なのか……。
紙の上にシャーペンを走らせながら次々に英文を書き連ねる。大学のテストで作文が出ることはないが、書けるだけで長文をかなり早く読めるようになるので訓練としては申し分ない。先輩に東京の大学を勧められた時から訓練し始めたおかげで今ではかなりの速読のレベルに達している。
こう、身に染みて感じる努力の成果というものは素晴らしいものだな。先輩もギターを練習する時はこんな感覚だったりするのだろうか。そうだと少し嬉しいなと思いながら、俺はまた文を付け足す。
そうこうしていると時間もかなり経ってきた。こうして集中して勉強すると鬼のような速度で時間が過ぎていて驚く。勉強をし始めた当初はこれだけ経つのに体感では物凄く時間を掛けた筈なのに、今では本当に一瞬だ。
「よし、一回休憩」
勉強の合間の休憩に俺は先輩達のライブ映像を見るようにしている。
理由は二つ。
一つは娯楽として。
一つは未来をより一層リアルに想像するために。
先輩達のバンド活動には何らかの形で俺はまた関わっていくと思う。だからこそ、先輩達の成長は常に追っておかなければならないのだ。
先輩達だけが努力して、俺が置いていかれるのは絶対に嫌だから。それだけで俺は十分頑張れる。
◆◇◆◇
ギターのチューニングを部屋でしながら後輩くんとのLINEの画面を見つめる。
数日前のやり取りが表示されている画面。最後は私のメッセージで終わっていた。別に後輩くんから返事が来ないことに何か思う事がある訳では無い。そもそも会話の流れとしては会話を終了する雰囲気だったのだから。
まぁ、そんな事を思いつつも、本当は素直に後輩くんとお話がしたいなと思っているだけだったりもするのだけれども。
「よしっ、頑張らないと」
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