第189話
第189話です。
文化祭を終えてから早数ヶ月が経った。夏休みを終え更には体育祭まで。日を重ねる毎に先輩の技術力はぐんぐんと上がり、それに比例するようにアスナさん達の技術力も上がっていった。加えて、比例するように先輩達の合同練習も回数を増やしている。
「明日でしたっけ?合同練習」
「そうだよ」
日の暮れた街を先輩と歩きながらそう話す。前回ライブをしたのが、大阪のライブハウスでサマーフェスティバルとして行われていたイベント。会場がアスナさんのバイト先だったのでオーナーに色々と気を利かせてもらったのだ。
俺も客として参加したのだが、ちゃんとしたイベントという事もあってクオリティはどのバンドも高い。なんなら参加しているバンドによっては既にCDを出しているようなところもあるくらいだったので、このイベントの規模の大きさには驚かされてしまった。
「いやぁ……段々と将来像が朧気だけど見えてきたよねぇ」
「将来像……ですか?」
「うん。あと数ヶ月もしたら私とメグさんは卒業。一度大阪に拠点を移してから本格始動だよ」
「そうでしたね。……大阪かぁ」
先輩との学校生活が無くなってしまうのは寂しいと思ってしまう。先輩がいたから、俺の高校生活はかなり色づいたのだ。それまでは……あまり好ましいものではなかったから。だから、俺の中で先輩の存在は大きい。
「俺も卒業したら大阪行こうかな……」
そうボソリと独り言のように俺は呟いた。
が、先輩にはしっかりと届いていたらしい。
「いや、後輩くんは東京の大学に行ってくれると嬉しいかな?」
「東京ですか?大阪の方が近いのに」
「そう。東京の方がさ、色々と嬉しいことがあるからね?」
先輩は人差し指を立てて「ふふっ」と笑う。先輩がそう笑うその真意は俺には分からないまま。
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