第188話
第188話です。
「そっかぁ……好きな人いるのかぁ」
「……意外、だったかな?」
なんとなく気になってそう尋ねてみる。
別に俺に好きな人がいてもおかしくはないのだが、利根里さんのこの反応については少し気になるものがある。なぜ、利根里さんが少し残念がっているのか。それが気になったのだ。
「意外かどうかで聞かれたら……まぁ、予想通りってところかなー」
「予想通りなら何でそんなに残念そうなの?」
「あれ、私残念そうにしてたかな?」
「俺にはそう見えたけど……違った?」
「どうなんだろうね」
そう言ってから言葉を噤む利根里さん。俺はここで発言してもいいのか分からなくて困ってしまう。
「多分……」
ぽしょりとそう呟いてから彼女は俺の方を向く。
「私は少しの可能性に縋りたかったんだと思うよ」
「少しの……可能性?」
「うん。もしかしたら私にとって良い方の可能性があったかもなってね」
「なるほど?」
「うん、分かってなさそうだね」
図星を突かれて俺は「うぐっ……」と声を漏らす。その様子を見ていた利根里さんは笑いながら俺の頬をつついた。
「分からなくても大丈夫。これは私だけの問題だからさ」
「そうなの?」
「そうだよ。私だけの問題」
◆◇◆◇
駅まで2人並びながら歩いて帰る。
後夜祭の後にこの辺りに残っている生徒はいないようで、駅のプラットフォームにも制服姿で立っているのは俺と利根里さんだけ。
静かな駅で電車を待つだけの時間はただただ無為に消費しているようで、実際のところはこの時間が落ち着くのだ。2人だけだから気にすることがほとんど無い。
「明日はお休みだね」
「だね」
「何かするの?」
「先輩の練習に付き合う事になってるよ」
「そっかぁ」
「利根里さんは?」
「私はー……服でも買いに行こうかな」
「さらにオシャレになるの?」
「そうだね。私は可愛くオシャレに変身するよ」
言いながら利根里さんはニヘッと笑う。
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