第187話
第187話です。
静かな時間をただ神社の階段に座って過ごす。
利根里さんは自嘲気味な事を言ってから、しばらく話していない。なんで静かになったのかは分からないが、まぁ気にすることでもないだろう。
暗めの神社からは空に浮かぶ星がよく見える。先輩だったらこういう時に新しい音楽を思いついたりするのだろうか。俺には到底思いつきそうにもないな、とそう思う。
「ねぇ、碧染くん」
「ん?」
不意に利根里さんが口を開く。俺は少し驚いたのを隠しながら返事をした。
「聞きたい事、あるんだけどいいかな?」
「いいけど。聞きたい事って?」
「そのね……好きな人が碧染くんにはいるのかなぁ〜って……気になってさ」
「なるほど……また突然どうして?」
質問の内容に少しドキリとしてしまうが、それよりもなぜこの質問を今されたのかという事の方が俺は気になって仕方がない。
利根里さんは「えっとね……」と何か考えるようにたどたどしく言葉を探しながら話す。
「ほら、文化祭って付き合うカップルが続出するからさ……ちょっと気になっちゃって!」
最後はやけくそのように笑いながらそう利根里さんは言う。なんだか本心を隠しているような気がしないでもないが、そこに踏み込んでもいいのか俺には分からない。分からないから、踏み込まないようにするのだ。
「好きな人かぁ……」
俺はそう呟きながらぼんやりと頭の中に人の影を浮べる。
多分……というかおそらく。いや、十中八九この人の事が俺は好きなんだと思う。
自分の中でそんな確信を抱きながら俺は静かに首を縦に振るのだった。
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