第186話
第186話です。
スマホ片手に電車に揺られる事しばし。私の自宅からの最寄り駅に到着した。プシューと音を立てて開いた扉から私は外に出た。この季節特有のムワッと湿度の高い空気が暑い。
「うへぇ……早く帰ろっと」
汗を流したいがために、走ることによって発生する汗の事は完全に無視して私は全力疾走だ。
坂道を登りながら私は息を切らす。あれだけ散々歌えるだけの体力を持ち合わせていながら、こうやって体を動かす程のものは持ち合わせていなかったようだ。
もう少し鍛えないとな……。
夜にでも走ろうかな。などと考えながら、見えてきた家に私は駆け込んだ。
「たーだいま、帰りましたぁー!!」
「お帰りー」
家の奥からお母さんの声が聞こえてきて、その後に足音が二つ近付いてきた。
「カオリさんお帰り」
「お、お帰りなさいです」
私の大切なバンドメンバーの2人だ。
2人は明日の朝帰るので、今日は泊まっていく。というか泊めていく。
「さて、私はちょいと急ぎめでお風呂に入ってきますので、お二方はまだゆっくりしていて下さいな」
私はそう残すと二階の自室に駆け上がり、ギターとカバンを置き、あとはブレザーをハンガーにかける。着替えを持ったら次は一階に降りて、脱衣所に駆け込んだ。ここまでにかかった時間、僅か1分。我ながら末恐ろしい足の速さだこと。
◆◇◆◇
俺は何故か、利根里さんと一緒に学校近くの神社を訪れている。後夜祭はどうなったのかと思われるかもしれないが、それはしっかりと楽しんだ後だ。
しかし、なぜ利根里さんは俺をここに連れてきたのだろうか。そこだけが分からないまま、今は石畳の階段に腰かけている。
「ここの神社って、ここら辺で一番高い位置にある神社らしいよ」
「へぇ」
「高い位置にあるから、別名高望み神社なんて呼ばれ方もしてるみたい」
「高望み?」
「そう、高望み。例えば絶対に無理だけど、東大に合格しますように!的なあれだよ。実力が伴ってないにも関わらず高いところを望む人が、ここにお祈りに来るんだって。しかも祈ったら必ず叶うっていうご利益付き」
「へぇ。初めて聞いた」
「だろうねぇ。だって私が今作ったもん」
「うえっ!?」
普通に信じてしまっていたのだが、もしかして俺は騙されやすい体質?なんて考えてみるものの、普通にありそうな話だったので、俺は決して悪くないと思うのです。利根里さんが策士だっただけの話さ。
「だけどまぁ……私としてはその話が本当だったらなぁとは思うけどね」
何故か自嘲するかのように笑う利根里さん。
俺は彼女のその真意を知らない。
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