第184話
第184話です。
演奏を終えると、舞台袖に私は消える。観客席の方からは拍手が聞こえてきて、1人達成感に浸っていた。
メグさんとアスナちゃんは先に家に帰ってもらっている。明日の朝には自宅に帰るそうなので、今日は私も早めに帰って見送るために早寝をしなければならない。
そう言えば後輩くんは私の演奏を聴いてくれていたのだろうか。何せスポットライトが私に当てられている状態で、観客席は反対に真っ暗。最前列の人の表情ならギリギリ見えるが、それより後ろとなるとさすがに確認できなかった。
聞いてくれていたらいいな、とそう思いながら私はギターをケースにしまう。そしてそれを背負うと私は体育館の外に出た。
「先輩」
出たところでちょうど聞き覚えのある声に呼び止められる。
「お、後輩くん」
「演奏聴きました。良かったです」
「えへ〜、そりゃ良かった!」
「はい。いつもと違う雰囲気も相まって、なんだか凄く……凄く良かったです」
噛み締めるように後輩くんはまたそう伝えてくれる。
こう何度も言ってくれると、こちらとしてもやはり嬉しい。しっかりと届けたい人に届いていた。それが何よりも嬉しいのだ。
「あ、そうだ。後輩くんはこの後どうするの?」
「この後は、一応まだ後夜祭に残るつもりですけど。先輩は?」
「ん、私は今から帰るよ。うちでメグさん達が待ってるからさ、小さな打ち上げでもしようかなと思って」
「あぁ。じゃあ俺からもお疲れ様でしたとでも伝えておいて下さい」
「おっけー。それと別に後輩くんも打ち上げに来てもいいんだけど、誰かと約束でもしてたの?」
私がそう尋ねると後輩くんは少し離れたところの壁際にもたれかかって歩く人を眺める1人の少女を指さした。
「利根里さんに誘われてて、なので今日はこっちを優先させてもらいます」
「そっか。じゃあ後輩くんがかっこよくエスコートしなきゃね!」
「かっこよくって……別にそんな大それたことをする訳じゃないじゃないですか」
「それはそうだけど、でもかっこいい方が男の子はいいの!ほら、女の子を待たせるのはダメだよ〜」
私はそう言って後輩くんの背中を押して送り出す。
さてと、じゃあ帰りますか。
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