第183話
第183話です。
弾き語りには弾き語りの良さがある。そう私は思うのだ。中庭で演奏した時のように精一杯叫んで歌うのも盛り上がって楽しい。けれど、こうして静かに自分の演奏を聞いてくれる人達に意識を向けるのもまた一つの醍醐味なのだ。
ギターを爪弾かせながら、静かに揺れる。
マイクに落とし込むように歌いながら、みんなの姿を眺める。
うん。きっといい感じなのだ。
◆◇◆◇
いくつか曲を引き終えた後に先輩が話し出す。
「それでは次の曲で最後です。私の次の人も待ってるからね。最後はオリジナル曲です。ちなみにお昼に弾いたものとはまた違うから楽しんでいってね」
そう言うと先輩は少しだけ強く弦を弾いた。
静かな曲ではあるものの、どこか力強さを感じる。
「曲名は……"花火"」
そう言って先輩は歌詞を紡ぎ出した。
曲の内容は男女の恋愛模様を描いたもの。聴いた感じ幼馴染同士の男女なよう。
成長するにつれて、すれ違ったり一緒になって重なったり、たまに喧嘩して、それでも笑いあったり。そんな曲。
そしていつも記憶の節々には手持ち花火があった。
空に咲く大輪の花火もいいが、手持ちの小さなものだっていいじゃないか。だって、そっちの方が近くに感じられて、感情も共有できるでしょ?
"花火"とはこの内容を表した題なのだろう。
俺は静かにリズムに乗りながら、先輩の歌声に聴き入る。
本当に、綺麗な歌声だった。
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