第182話
第182話です。
中庭で盛大な盛り上がりを見せたバンドのボーカルによる弾き語りのためか、体育館には既に多くの人が集まっている。この人数が表すのは期待値でそして人気度でもあるのだ。ゆえにだろうか。先輩のサポートをしてきた碧染くんは、この人達を見てどことなく嬉しそうだった。
やっと先輩の素晴らしさに気が付いたのか……と。
そう思っているような気がした。
私達は適当な場所を見つけるとそこに座る。体育館にはブルーシートが敷かれていて、そこに直に座る形らしい。
もうすっかり外も暗くなった影響か、ブルーシート越しに伝わる体育館の床はひんやりと冷たくて、思わず身震いしてしまった。
「何か……寒いね」
「だね。まだ夏になりきれてないんだろうな」
「これからびっくりするくらい熱くなるからねぇ」
私達の住む田舎は、反対側を山、反対側を海で囲まれた地域。夏も程よく風が吹けばいいのだが、体育終わりには蒸し暑い風が吹き、冬になると山からの吹き下ろしの風と、海からの冷えきった風のダブルパンチによって、毎年地獄の様な気候を生み出しているのだ。
身震いする体を抱きながらしばらく待っていると、ステージの上にスポットライトが照らされる。自然とみんなの視線はそちらに向き、舞台袖からはギターを片手に持った先輩が歩き出てきた。
自然と息を飲む。
あの演奏の迫力を生で見たものは自然とそうなるはずだ。
圧倒的で力強い歌声。それをみんな楽しみにしながら、先輩が弦の一本を弾いて、曲は始まる。
一曲目は有名バンドのもの。アニメの主題歌にも選ばれていて、本来はもっとハイテンポかつハイテンションなのだが、弾き語り調にアレンジしているせいか、今はどちらかと言えば歌詞に引き込まれるようなそんな曲調に変化していた。
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