第176話
第176話です。
手のひらが熱く痛くなるほどに激しく私は拍手を送る。
正直に言ってここまですごいとは思っていなかった。所詮高校生の真似事に過ぎないと、そう思っていた。にも関わらず、彼女達は易々とそれを超えてきたのだ。
圧倒的で感動的な、衝撃を超えて完璧なその迫力に私は言葉を失ったまま、私は隣の碧染くんの服の裾を引く。いかにもしてやったりと言ったような表情で碧染くんはニッと笑いながらこちらを見た。
「凄かったでしょ?」
「も、もう、訳が分かんないくらい、凄かった……」
「ふははっ、その反応最高」
「ち、ちょっとー!笑わないでよっ!」
声高らかに笑う碧染くんの肩にポカリと拳を当てがいながら、私はぷくりと頬を膨らませる。
なんだか、今日の碧染くんはいつもよりも楽しそう。というかいつもよりも自信に溢れているというか、誇らしそうというか。やはりあれだろうか。サポートしてきていた先輩達がこうしてみんなに受け入れられているからなのだろうか。
なんだかそれだと普段の私がまるで全く碧染くんの事を楽しませれてあげれていないような気がして、少し悔しい。
別に張り合うところでもないのだが、そこは私の性格上そうなっているから仕方がないのだろう。
ステージ上の先輩達が舞台袖に消えると、観覧エリアにいた人達はそれぞれ「凄かったね」と感想を言い合いながらゾロゾロと動き始めた。私達もそれにつられるようにして移動し、そして舞台裏の方へと向かう。おそらく先輩達を迎えに行くのだろう。
「お、後輩くーん!」
元気よく手を振る女性は、先程ステージの中央で堂々と歌いきった彼女。赤坂先輩その人だ。やはり歌を歌うのは相当体力を使うようで、額にはじんわりと汗をかいている。
「どうだった、どうだった!?」
まるで飼い主が帰ってきて嬉しく、しっぽを振る犬のようなテンションで先輩は碧染くんに近付く。
「良かったですよ。カッコよかったです」
「おぉ!!アスナちゃん!メグさん!カッコよかったって!!」
「当たり前だ、当たり前」
「え、へへ……」
後ろでは各々が感情を顕にしながら少し照れたように笑う。その様子を第三者の私が見ると少しおかしくて、笑えてきた。
なんだか、この空気感、羨ましい。
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