第175話
第175話です。
赤坂先輩が声高に曲名を叫んで音楽が始まった。
今あの人はオリジナル曲と言ったのか。
私の聞いた事がない曲。
「何これ、何これっ!?」
思わずそう叫んでしまった。
身体中の血液が沸きあがるような高揚感。そして、全身を鳥肌で覆い尽くすような昂り。
凄すぎる。端的にそう思った。
「凄いでしょ?」
「うんっ。凄い、凄いよっ!!」
ニヤリと、してやったりといった表情で碧染くんは笑った。
もしかして碧染くんはこのオリジナル曲のことも知っていたのだろうか。いや、むしろ知っていないとおかしいのか。にしても、このクオリティを普通の高校生が作って弾けているだけで異常事態な気がする。
3人の演奏技術は先程まで借り物の曲に過ぎなかったせいなのか上手いには上手いのだが、どこか華に欠けるものがあった。しかし、この曲では別格。華も迫力も、鬼気迫る感じも段違いに跳ね上がって、こちら側に何かを伝えてくるようで。もうとにかく、言葉には言い表せないような気分になるのだ。
「この曲、先輩が1人で作ったんだって。歌詞からメロディー全部。ドラムとベースは協力してもらったみたいだけど、それ以外本当に全部。凄いよね」
何か遠くにあるもの見つめるような目で碧染くんはそう呟いた。彼の先輩達を見る目は、なんだか私がキミの事を見つめている時と変わらないような気がする。
私はその目を見なかったフリをして、またステージの上を見た。この音楽を聞いて気になった人が、校舎の窓からステージの上を見ている。その他にも先生や、地域の人達も段々集まってきていて。
『START Again!!!』の演奏が終わる頃、中庭には始まった頃とは比べ物にならない程の人が押し寄せていた。そしてここに来た人全員が、力強い拍手を3人に送る。
拍手の雨、それが表現するには一番分かりやすいのかもしれない。
3人はその雨を全身で浴びながら気持ち良さそうにして、最後は静かに頭を下げて「ありがとうございましたっ!」と元気よく言った。
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