第170話
第170話です。
碧染くん達の進行方向から予想して、次に通りそうな場所の目星をつけると、私はそこに先回りすることにした。小走りで駆けながら人の波を避ける。
私の作戦としてはこうだ。シンプルに偶然を装って碧染くんに話しかける。そうすると必然的に赤坂先輩にも私の存在は認知されるわけだから、多少の牽制にはなるやもしれない。
しかしだ、赤坂先輩の牽制がそれで仮にできたとしても、あの銀髪の子がこの学校の生徒じゃないということを考えると、完璧にあの子を牽制しきるのだけは難しいかもしれない。
考えながらしばらくして目星をつけた場所に辿り着いた。しばらくそこで人の波を観察していると、見覚えのある4人を見つける。
「ふぅ……」
私は深呼吸をして意を決するとテクテクと碧染くんの元に歩いて近付いた。
「あ、アレー?碧染くんキグウダネー?」
「あ、利根里……さん?なんかものすごいカタコトだけど」
首を傾げながら碧染くんは心配そうにそう尋ねてくる。
大丈夫心配しないでください。カタコトなのは予想外でしたが、私は元気ですっ!
と、内心振り絞るように明るくそう言ってみたが、実際は割と凹んでいた。
あれれ、偶然を装って会うはずが、カタコトになっただけで一気に計画が瓦解した気がするぞー?
そう思いながらも、私はここから挽回する他ないと気合いを入れ直す。
「そ、それより、碧染くんって先輩とどういう関係なの?さっきメイド喫茶には来てなかったけど」
「あー、先輩とどういう関係かかぁ」
何だか渋るような言いにくそうな、言いたくなさそうなそんな雰囲気を感じるが、ここで「やっぱり聞かなかったことにして!」と話を途切れさす訳にもいかない。真っ向から向かうにはこうするしかないのだから。
「そうだなぁ……」
碧染くんはちらりと後ろにいる赤坂先輩の方を見る。しかし先輩はクールビューティな彼女とおしゃべりに夢中で、あまりこちらに意識を向けてはいなかった。
悲しいかな、碧染くんはため息だけつくとスマホを取り出してLINEを私に送ってくる。
『今日の文化祭が終わったあとに話してもいい?』
私はそれを読んだ後に碧染くんの方を向いてこくりと頷いた。
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