第166話
第166話です。
少し離れたところで俺は先輩達の打ち合わせを眺めた。
俺の知らないところでこの人達は何度も音を合わせ、言葉を交わしてきたためだろうか、確実に信頼感というものは育まれ、時には年下のアスナさんも意見をしたりしている。傍から見れば順調そのものだ。
有志の人による出し物は午後から中庭の舞台にて行われる。先輩達はバンドということで大トリを任されたらしく、その分気合が入っているようだった。
屋上から見える中庭では、文化祭専用Tシャツに身を包み、腕にはスタッフの証となる腕章を着けた生徒が忙しそうに動いている。
ステージ自体は完成しているのだが、主に音響やライトといった演出の面での準備に時間がかかるようだ。確かにこちらは出し物を華やかにするためのものであるので、これにミスが生じると一気に冷めたものになりかねない。バンドである先輩達の演出にも当然これらは使うので万全の準備を頼みたいところだ。
「あ、後輩くん」
「はい?」
「今から音楽室で簡単に音合わせするんだけどさ、ドラムを運んだりするの手伝ってくれたりしないかな?」
「分かりました。それで、ドラムは何処に?」
尋ねると先輩は俺のすぐ後ろを指さす。それにつられるようにして振り向くと、確かにそれはあった。
「組み立てられる前でよかった……」
「だよね。生徒会の子達に頼んでたんだけど、もしちゃんと組みたててあったら運ぶのが余計に大変だったよ」
胸をなで下ろしつつ、俺は可能な限りドラムのパーツを持ち上げた。先輩達も協力してくれるが、そもそもの体が大きくないのでやはり持てる量と大きさには限界があるらしい。
これは何回が往復だな。
そこそこの重労働になることを覚悟しつつ、俺は音楽室に向かい始めた。
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