第162話
第162話です。
後ろに2人を伴いながら俺は利根里さん達のいるメイド喫茶に向かう。利根里さんにこの2人の事を話したことは無いし、もちろんアスナさんにもメグさんにも利根里さんの事は話していない。だから3人からしたら俺とどういう関係があるのが分からないだろう。
「あ、碧染くんもう良かったの?」
教室に入るとメイド姿で接客に勤しんでいた利根里さんがパタパタと近付いてきた。こてんと首を傾けながら俺の顔を覗くようにしてそう尋ねてくる。
「もう良いというか、なんならまだ用事の最中というか」
「ん?どういう事?」
利根里さんが再度首を傾けたところで後ろから話しかけられる。
「なぁ京弥。入ってもいいか?」
「あ、ごめん。メグさんもどうぞ」
そう言って俺の後ろから現れた女子2人。急に知らない人物が現れたせいなのか、利根里さんはポカンとしている。
「え、えーと……どちら様?お客様ですかね?」
「お客様で間違いはないよ。別の目的ついでに寄っただけでもあるんだけどね」
「別の目的?……まぁ、いいや。それよりもお客様ならちゃんとおもてなししないと!」
利根里さんはそう言ってからコホンと一度咳き込んだ後に一度その場で翻る。そしてスカート部分の端を少しだけ持ち上げると「お帰りなさいませ、お嬢様方」とマニュアル通りの動きをした。
「じゃあアスナさんとメグさんは楽しんでてください」
「え?京弥はどうするんだ?」
「俺は待ってる間は裏の仕事でもしときますよ。どうせまたすぐ移動しないといけないし、その分他の人に仕事を押し付けてるんで」
そう伝えるとどことなく拗ねたような様子で「あっそー」と呟いていた。
メグさんは相変わらず視線だけが動いて足元は一切動かない。何もやましい事がないのにこんなにも目が泳ぐ人、初めて見たよ。
苦笑いを浮かべながら俺は後のことを利根里さんに託して裏に行く。裏に入ってすぐにクラスメイトの男子にあの美人2人は誰なのかと聞かれたが、適当に誤魔化した。
あの2人は先輩にとって大切な人達。大事なメンバーなのだ。ここで無駄にあの2人との交友関係をバラして先輩に迷惑でもかかってもみろ。悔やんでも悔やみきれないぞ。
そう思うと尚更俺は口を割ることはなかった。
ちらりと仕切りの隙間からアスナさん達の案内された机を見てみる。アスナさんは相変わらず拗ねたような表情でスマホを弄り、メグさんはガッチガチのままだった。当然利根里さんは困りに困っている。
本当は補助に入った方がいいのだろうが、何となく俺はその様子を見ているだけにしたかった。共通の知り合いである俺がいないとあの空間はどうなるのか。何となく、それを見てみたい気がしたのだ。
ぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!次回は16日です。