第157話
第157話です。
家に帰るまでの道すがら俺はふらりとコンビニに立ち寄る。最近新しく発売されたアイスの新フレーバーを購入すると、少し浮き足立った足取りで家に帰るのだった。
教室を出てから利根里さんも俺の後に着いてくるようにして出てきたが、その後速攻で先生に別案件で呼び出されて帰れなくなるという悲劇に見舞われていた。あれは可哀想だったな。
「先生っ!嘘だと言って!」という悲痛な叫びが廊下に響くのを俺は合掌しながら見た後に、こうして1人で帰っているわけなのだ。
にしても、暑い。
ダラダラと汗をかくほどではないものの、しばらくの間歩いたりしているだけでじんわりと汗をかく程度には暑いのだ。これからもっと暑くなっていくのだと考えると憂鬱で仕方がない。
「早く帰ろ」
◆◇◆◇
家に着いてから俺は手洗いうがいを先に済ませてから部屋に戻った。窓を全開にして外から風が入るようにする。
コンビニのビニール袋の中からプラスチックのスプーンと先程買ったばかりのアイスを取り出すと、俺はにんまりと人知れず不敵な笑みを浮かべた。
「数ヶ月待った甲斐があったぜ」
新フレーバーの発売自体は冬の間から告知されていた。しかし、諸々の開発等でなぜか発売までの期間が何度も延期して、そして今日やっと本物とのご対面となったわけなのだ。
アイスカップの蓋を取り、スプーンで蓋に付着した少量のアイスを取る。そしてそれを最初に口に入れてから俺は確信した。
これは期間限定ではなくレギュラーにすべきでは!?、と。
口に入れた瞬間にクリーミーな舌触りを感じ、そして新フレーバーに使われた果物の酸味がほんのりと広がる。クリーミーさと酸味という対照的とも思える二つの融合によって、俺は舌を通して満足するという事を実感していた。
「よし……いくか」
満を持して俺は本体の方にスプーンを差し込んだ。コンビニから家まで距離があったので少し溶けている分、すんなりと抵抗なく入ってくれる。グッと持ち上げるようにしてスプーンの上にアイスを乗せると俺はそれをまじまじと眺めた。
果物による薄い黄色い色素のアイス。それが宝石の様にも見えて、このアイスのシリーズを追いかけている身としては興奮せざるを得なかった。
しばらく眺めた後、俺は意を決して口に運ぶ。
「んっふー!!!」
やっぱり最高だ。
今度先輩にも食べさせてあげよう。
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