第154話
第154話です。
田舎にいては揃うものも揃わないので、俺達は電車を使って街に出た。平日の夕方とはいえ、やはりこの辺りで一番大きな街だからだろうか、人はとても多い。
行き交う人の波を上手に避けながら、俺と利根里さんはみんなから聞いたものをまとめたメモを見た。それぞれで大分必要としているものが違う。ガムテープやリボン、木材辺りはまだ分かるのだが、なぜお寿司を求められているのかは分からない。お腹が空いているのだろうか。
そんな事を考えながらひとまず一番簡単に手に入りそうな小物系を探しに行くことにする。
「碧染くん!これはデートですよ!」
「急にどうしたの。これはデートではなく買い出しですよ」
「そうだけど、見方を変えたらやっぱりデートだよ!」
拳に力を込めながら利根里さんは俺に向かってそう力説する。
そこまでデートという事にこだわる理由もよく分からないが、ひとまずはその場で適当に流すことにした。このことについてまともに話し合っていたら終わりが来ない気がする。
適当にぶらぶらと歩くと色々な種類の店の入った建物が出てきた。自動ドアを抜けて俺達はエスカレーターを使って三階に上がる。
動く箱の中には俺と利根里さんしかいない。
ガラス張りの壁から見る外の景色は何度見ても不思議な気持ちになる。例えるなら、小さな箱にはの中を歩くアリを見ている気分だ。実際に箱の中にいるのは俺達なのだけど。
にしてもこの構図は人の自由を上手に表しているようには思えないだろうか。
箱庭の外にいる人間。それが今の俺達だとすると、そこは完全な密室となった個室で、自由がない。それに対して箱庭を歩くアリ。今で言うところの外を行き交う人々。彼らにはその足でどこにでも行ける道がある。自由がある。
多分、人という種族は何世代重ねても一生真の自由を掴めない気がするのだ。自由らしい時間はあってもそれには必ず終わりが来る。所詮は人間社会の歯車に過ぎないのだ。
と、そんな面白くない事を考えているとドアが開く。利根里さんにつられて俺も降りると、ひんやりと心地いい空気が俺の体を包んだ。
「あっちかな」
そう言いながら利根里さんは勘に任せて、求める品がありそうな方向へと向かう。後から俺もついて行く。
しばらく歩くとかなり大きめの文具屋が見つかった。おそらくここに求めるものがあるだろうということで俺達は手分けして探すことにする。
さて、さっさと見つけて次に行くか。
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