第153話
第153話です。
放課後の教室に戻るとそこでは俺以外のクラスメイトが作業に励んでいた。男子は力仕事に、女子は小物や飾り付けなどセンスと手先の器用さを必要とするものを分担して行っている。
俺は自分の席に向かって荷物を取り、帰ろうとすると名前を呼ばれた。
「碧染くん、帰っちゃうの?」
「帰るつもりだけど」
「一緒に準備しよーよ」
俺の名前を呼んだ利根里さんは服の裾を引きながら誘ってくる。
「でも、俺特に役割振られてないし」
「ぶー。私も何もなくて暇なのー」
「なら帰ればいいんじゃ……」
「それはみんなに申し訳ないっ!」
「えぇ……」
自分の好きなようにしたらいいのにと思いながらもそれは口にしないでおく。
ひとまず荷物を机の上に置き直すと俺は「どうしたらいい?」と尋ねた。
「残ってくれるの!?」
「だっていて欲しいんでしょ?」
「うんうん!いてて欲しい!」
嬉しそうに首を縦に振りながら利根里さんは笑う。こんなにも可愛らしい笑顔を見せられると少し勘違いしてしまいそうになるから、俺は自分が嫌だ。
「それで利根里さんも役割無いの?」
「うん。仕事はさっき終わっちゃってね、帰ってもいいよって言われてるんだけど、みんなまだ残ってやるみたいだからさ」
「みたいだね」
「だからどうしようかなってね」
「うーん、じゃあ買い出しにでも行く?」
試しにそう提案してみる。すると想像よりもいい反応を利根里さんは見せてくれる。
「買い出し!いいね!」
「クラスの人に何かいるものだけ聞いて行こうか」
「うん!」
利根里さんは大きく頷くとその持ち前のコミュニケーションと人脈でクラスのみんなに必要なものがないか尋ねる。そして聞き出したものをスマホにメモすると利根里さんは「行こっか」と言って俺の手を引いた。
教室を出る瞬間に男子から恨めしそうな目で見られたが、そこは気にしないようにしよう。
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