第151話
第151話です。
駅構内にてアスナさんと別れると、俺は自分の住む地域方面の電車に乗る。相変わらず車内はガランとしていて、寝るのにはうってつけだった。
適当な席を見つけると俺はそこに座り、イヤホンを耳に装着する。
流れてくる曲は割と最近の洋楽。バラード調で、歌詞の意味を調べたら分かるが、どうやら亡き相手に届けるためのラブソングらしい。
少ししんみりとした音色で耳心地を良くしながら俺は車窓の外を眺める。まだ大阪を出ていないからビルや建物といったものが多く見えるが、次第にこの景色も段々と緑に変わっていくのだ。そして、反対側には海も見えることだろう。
田舎が不便だというのは当然周知の事実だし、それは俺も認めている。都会のように発展させて、利便性を良くしたらいいのにとも何度も思った。けれど、田舎には田舎にしか出せない独特の居心地の良さと、空気感というものがあるのだ。
人と人との関わりは近いし、普段から目にする自然もとても多い。大阪と比べるとわかりやすいが、圧倒的に緑の数が違うのだ。
確かに大阪も東の方に行けばかなり自然が多いのは知っている。ただ大半を発展した場所が占めている府となると、やはり持つ印象は都会なのだ。
「……寝るか」
寝た場所がソファという事もあって完全な休息を取れていたわけではない。
瞳を閉じると、耳に流れる音楽と電車の揺れに身を任せながら、俺は深い微睡んだ世界にゆっくりと落ちていった。
◆◇◆◇
地元に帰ってきたのは昼少し前。日も大分高くなり、直射日光が肌に痛い。大阪と違って高い建物が少ない分日陰になる場所も、局所的に風が吹き抜ける場所もないので、俺はあえて海辺の方を選んで歩いた。
潮風がツンと鼻に香るが、何年も住んでいれば気にならないくらいには慣れる。意識してしまったのは昨日1日まともにこの香りを感じていなかったからだろう。
じんわりとかき始めた汗に少しだけ気を取られながら、俺は足早に家に戻ることにする。
海辺から歩いて10分。割と近くにあるおかげで、夏場は大助かりだ。涼みやすい。
家の鍵を開けて中に入ると、俺はただいまも言わずに直行で風呂に向かった。
かいた汗と直接浴びた潮風特有のベタつきを落とすためだ。
服を脱ぐとシャワーを全身で浴びる。
冷たい水が心地良い。
そして、頭も冷え切ってきた。
じっくりと先輩達の事を考えるなら、今か一番いいだろう。
そう思いながら、俺は手のひらにシャンプーを出したのだった。
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