第14話
第14話です。
私の名前は利根里莉央。どこにでもいる普通の女子高生だ。
普段の生活は頑張って入試の倍率を勝ち抜いて入った高校に毎日通い、勉強に苦戦しながらも友達と仲良くする、なんてことのない普通の生活。
ただまぁ、高校生になるまでもそんな生活だったのかと聞かれれば、どうだろう?、というのが正直なところだ。
私は中学生まではクラスの中心、ではなく隅っこで数人の女の子と仲良くする。そんな生活だった。それが高校に入ってから眼鏡を外してコンタクトに変え、ちょっと背伸びをして髪の毛も腰ほどまであった長さを大胆に切り、茶色に染めてみればどうだ。今までの隅っこ生活から中心への生活に変わったではないか。
初めは驚きしかなかった。私は別段話が面白いわけでも、頭がいいわけでも、スポーツが出来る訳でもない。つまるところ、人よりも特出した所がないのだ。
人というのは普通、優れた人の周りに群がる様な印象がある。
だからこそ分からなかった。なぜ私がクラスの中心にいて、クラスメイトが私と仲良くなろうとするのか。仲良くなるのが嫌なのではない。むしろ友達が増えるのは嬉しい。だけど、仲良くなろうとする人の中には、私を何かのステータスかのように見てくる人がいたのも事実だ。
その事実はあまりにも不気味だった。
私は私でしかない。なのに、他人のステータスとして扱われる恐怖。
だから私は誰かに助けを求めた。直接じゃない。でも関わっているだけで自然と気が楽になる君に。
目の前で砂糖とミルクを入れたコーヒーを飲む君に。
「どう?コーヒー美味しい?」
「うーん、ちょっとまだ苦いかも。ははっ、また砂糖入れないと」
笑顔を浮かべながら君はそう言った。
その言葉は間違いなく事実で、彼が感じている事そのものなのだろう。
だけど、何となく私は彼の本当の顔を見た事がない気がする。いつもどこかで気を張って、明るく振舞って、今だってほら。作り物みたいに綺麗な笑顔を浮かべてる。
「はい、私のに付いてた砂糖分けてあげるよ」
「お、ありがと」
砂糖の入った細い紙袋をピシッと破ると、逆さにしてサラサラっと白い粉をコーヒーに投入した。
白い粉ってだけだと、何だか危険な香り。
スプーンでカタカタとコーヒーを混ぜると君は少しまぶたを薄めながら、一口コーヒーを口に含んだ。
「うん、いい感じ」
「それはよかった」
ニッと笑いながら私もコーヒーを飲んだ。
やっぱり砂糖無しは苦い。
◆◇◆◇
空には無数の星がキラキラと輝いていた。その中でもやはり月は一番目立つ。大きさでも明るさでも、何より地球との近さでも。
今の私の立ち位置は月みたいな位置なのだろうか。それとも無数の星々の中にある一つに過ぎないのだろうか。
確かめたくても、確かめられない。元隅っこ人間の私にはそんな度胸はない。
こう見えて彼は女子からの人気が高いのだ。いわゆるあキャーキャー言われるアイドル的な存在ではなく、影でヒソヒソと「かっこいいよね」と言われる本気の方。
彼の事を本気で好きな子は普通に多いのだ。
本人は全く気がついていないらしいけど。
(これは彼が鈍感と言うよりも、女の子達が察されないように細心の注意を払ってるからなんだろうなぁ)
ここまで気づかれないようにしている女の子はすごいと思いながらも、私は少し思ってしまった。
「それじゃ、手に入んないよ、ってね」
「ん?何か言った?」
「明日の宿題嫌だなぁって、言っただけだよ」
「え!?明日って宿題あったっけ!?」
「ウソ〜」
ガックリと項垂れる彼を見て笑いながら、私はローファーを鳴らす。アスファルト舗装のされた歩道には、2人分の長さの違う影。そこに生じる隙間を私は埋めることが出来るのか、それは未だに分からない。
ぜひブックマークと下の☆からポイントの方をお願いしますね!次回は26日です。