第148話
第148話です。
「着きましたよ」
寝室の扉を開けて部屋に入ってすぐのところにあるベッドの前に立つと、俺はアスナさんにそう言った。ゆっくりと下ろすと俺はリビングに戻るために後ろを向こうとする。するとすぐに服の裾が引っ張られた。
「何戻ろうとしてるんだ?」
「え?いや、リビングのソファを借りて寝ようかなと」
「ん?京弥もここで寝れば良くないか?」
「バカですか?」
思わず速攻でツッコミを入れてしまった。バカと言われたのはあまり気に食わなかったのか、顔を顰めてこちらを睨んでくる。
「私は別にバカじゃない。偏差値だって65は模試で毎回取ってる」
「本当にバカじゃないのやめてくれませんかね。いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて、考えがバカなのってことですよ。ただでさえ年頃の男女が一つ屋根の下で一夜を過ごすのもどうかと思うのに、一緒に寝たらダメでしょ?」
「そうか?」
「そうなんです」
この人は倫理観をどこかに捨ててきてしまったのだろうか。今から変な男を連れ込まないか心配になってしまう。
「なので、俺はリビングに戻ります。ゲームもキリのいい所まで進めたいし」
「……」
「いいですね?戻りますよ」
「……つまんないなぁ。私達は友達なんだから別に一緒に寝るくらいなんてことないだろ。それともあれか。京弥は童貞か」
とんでもない単語がアスナさんの口から飛び出してきて俺は思わずギョッとしてしまった。
この人はなんちゅうことを言っとるんや……。
思わず脳内での言葉が関西に染まりきってしまう。
「あのですね?普通の高校生はそういう事をしてないんですよ。たまにしてる人もいますけど、それはちゃんと恋仲になってさらに親密になった人達です。俺はそもそも彼女がいないのでしたことはありませんっ!」
最後の方は声が大きくなってしまうが、アスナさんはその事は特に気にせず「ふーん?」と言うだけだ。
「そもそも、アスナさんだって別に……し、したことないでしょ?」
「照れるなら言うなよ」
「しょうがないでしょ!?言われっぱなしは負けた気がして嫌なんですからね!?」
「そういうもんか。それで京弥は私の事を勝手に処女認定してるわけだな?私のそこら辺の事情は知らないのに」
「た、確かに知りませんけど」
なぜだろう。この含みのある言い方。もしかして、同学年な俺よりも大人の階段を先に進んでいらっしゃるの!?
という事を考えているのが顔に出ていたのだろう。アスナさんは「ぷふっ」と吹き出すと、一気に笑いだした。
「当たりだよ当たり。安心してよ、私はそういう経験のない処女様だよ」
「お、おう……。いや、まぁ、あったとしても俺は何も言いませんけど」
「何も言わないのか?」
「そりゃあ、アスナさんが選んでしたことなら……まぁ、衝撃はあるだろうけど、俺が遅れてるってことで納得すると思うよ」
「あっそー」
アスナさんは最後なぜか不服そうに頬を膨らませてベッドに寝転がった。背を俺に向けて寝転がっているので表情は見えない。
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